日本学生支援機構(JASSO)の奨学金を利用する際に、保証人を必要ない選択肢をご存知ですか?一般的に奨学金の利用には保証人が必要なイメージが強いですが、機関保証という制度を利用する場合には保証人が不要になります。
この記事では、奨学金の「機関保証」制度について詳しく解説します。
保証人を立てる必要がない機関保証のメリットやデメリット、そしてどんな人におすすめかなどをわかりやすく説明していきます。
機関保証とは?奨学金で保証人が不要な制度

日本学生支援機構の奨学金における機関保証とは、保証機関が奨学生の連帯保証をする制度のことを指します。
機関保証は一定の保証料の支払いが必要ですが、人的保証制度とは異なり連帯保証人・保証人を必要としないことが大きな特徴です。
注意点としては、平成29年度以降に第一種奨学金で所得連動返還方式を選択した場合、奨学生は機関保証制度を選択する必要があります。
機関保証の特徴・ポイント

保証人が不要という大きな特徴がある機関保証制度。利用する際にいくつかの特徴を押さえておきましょう。
今回解説する機関保証の特徴・ポイントは以下のとおりです。
【機関保証の特徴・ポイント】
- 保証料の支払い義務
- 保証の範囲と期間
- 保証料の算出方法
- 保証料の返戻
- 保証機関による代位弁済
順に解説していきます。
保証料の支払い義務
機関保証で保証料を支払う場合でも、奨学生が貸与を受けた奨学金は返還する必要があります。
決して保証料を支払っているからといって、貸与額の返還が無くなる訳ではないため、認識しておきましょう。
保証の範囲と期間
機関保証の保証の範囲は、元金・利息(第二種奨学金のみ)・延滞金です。
保証期間は貸与開始から返還完了までで、1回目の保証料を受領した時から保証が開始されます。
保証料の算出方法
月額保証料は、貸与月額・貸与期間・返還期間等を基に算出され、奨学生採用決定時に交付する「奨学生証」で保証料が通知されます。
また、保証料の支払い方法として、奨学生自身が直接的に保証機関に対して保証料を支払うことはなく、日本学生支援機構が毎月の奨学金の貸与額から保証料月額を差し引き、奨学生の口座に振り込みます。
保証料の返戻
保証料は、場合によって保証機関から一部返戻されることもあります。
【支払われた保証料の一部を保証機関から返す場合の例】
- 全額繰上返還をして、返還期間が短縮された場合
- 一部繰上返還をして、返還期間が短縮され、返還が完了した場合
- 機構の返還免除の適用を受け、返還が完了した場合
返戻される場合の保証料の振込先は、原則として奨学金振込口座・振替用口座(リレー口座)となります。
保証機関による代位弁済
奨学生が奨学金返還を延滞してしまった場合(返還期限猶予は除く)、一定の期間が経過すると日本学生支援機構からの請求を奨学生に代わって保証機関が日本学生支援機構へ債務を弁済します。これを代位弁済といい、保証機関の代位弁済後は奨学生が原則一括で代位弁済額を保証機関に返済しなければなりません。
万が一、代位弁済額の返済が滞った場合は、年10%の遅延損害金が加算されるため、注意が必要です。
なお、特別な事情がある場合には、保証機関が個別に対応する場合もあります。
機関保証制度の各種手続きや流れ

ここまで、機関保証制度の概要を説明しました。
以下では、機関保証制度を利用する場合の奨学金申し込み時・採用後の手続きや、返還を延滞した場合の流れを解説します。
奨学金申し込み時の手続き
機関保証は奨学金申し込みと同時に、学校の窓口を通じて申し込みます。
申し込む際には、以下2点に注意しましょう。
- 未成年者の場合は親権者または後見人の自署・押印が必要
- 連帯保証人及び保証人は必要ないが、「本人以外の連絡先」(本人と連絡が取れない場合に本人の住所・電話番号を照会できる人)の指定が必要
奨学金採用後の手続き
奨学生として採用後、返還誓約書と保証依頼書を学校の窓口を通じて提出します。
その後、毎月の貸与額から保証料月額を差し引いた額が口座に振り込まれます。
採用後の手続きとしては、以下2点に注意しましょう。
【奨学金採用後の手続きで注意する点】
- 返還誓約書には、奨学生本人、本人以外の連絡先(機関保証選択者のみ)、親権者(奨学生が未成年の場合)各自が署名する
- マイナンバーを提出していない奨学生本人は「住民票」の添付が必要
返還を延滞した場合の流れ
万が一奨学金の返還を延滞した場合は、以下の流れになります。
【返還を延滞した場合の流れ】
- 日本学生支援機構から催促がされる
- 日本学生支援機構より個人信用情報機関に延滞情報が登録される
- 日本学生支援機構より保証機関に対して代位弁済請求がされる
- 保証機関が日本学生支援機構に対して代位弁済をする
- 保証機関より奨学生に対して代位弁済額の請求がされる
- 奨学生は代位弁済額を返済する
延滞して個人信用情報機関に延滞情報が登録されると、クレジットカード、自動車や住宅ローンの利用に制約が生じることもあるため、注意しましょう。
保証人がいない場合の機関保証以外の選択肢は?

機関保証の大きな特徴として、保証人が不要ということが挙げられますが、機関保証以外にも保証人が不要の代替手段はあります。
今回ご紹介するのは以下のとおりです。
【機関保証以外で保証人を必要としない代替手段】
- 給付型奨学金を利用する
- 教育ローンを利用する
それぞれについて順に解説していきます。
給付型奨学金を利用する
奨学金は返済が必要な「貸与型」と返済不要な「給付型」の2種類があり、給付型奨学金の場合は保証人が不要となります。
日本学生支援機構の返済不要の給付型奨学金は、国費を財源として、優れた人にも関わらず経済的に困難な状況にある人に対して、進学を諦めることのないように進学を支援する制度です。
また、給付型奨学金には日本学生支援機構以外にも、大学・専門学校や各自治体、民間企業など、さまざまな種類の運営元があります。
各奨学金制度によって、申し込み条件や書類、方法は異なるため、申し込みに際しては各募集要項などを事前に確認することが重要です。
教育ローンを利用する
教育ローンは、奨学金の代替または補助手段として利用する方も少なくありません。借入条件によっては保証人不要の場合もあることから、保証人不要な選択肢として、検討しても良いでしょう。
教育ローンは国の教育ローンである日本政策金融公庫や民間金融機関の教育ローンである銀行や信用金庫などに大別されます。
利用する場合には、提供元によって金利や借入期間、借入上限額などの諸条件は異なるため、自身の状況に合わせて選択をしましょう。
まとめ
本記事では、保証人が不要の機関保証制度について詳しく解説しました。
機関保証制度は保証料が追加で必要など、デメリットはありつつも、人的保証のように連帯保証人・保証人が不要なため、保証人を依頼できない人にとっては奨学金利用の選択肢が広がるでしょう。
また、保証人が不要な代替手段としては、奨学金の機関保証制度以外にも複数あります。
本記事で紹介した各手段の特徴などを参考にして、自身の状況に合った最適な選択をするようにしましょう。