奨学金の返済に悩む若手社員を支援する「奨学金返済支援制度」が注目を集めています。
この制度は従業員の奨学金返済を企業が支援するもので、人材確保や定着率向上に効果があると言われています。
本記事では、奨学金返済支援制度の概要やメリット・デメリット、導入企業の事例などを詳しく解説します。
奨学金返済支援制度(代理返還)とは
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奨学金返済支援制度は、従業員の奨学金返済を企業が肩代わりする福利厚生制度です。具体的には、企業が従業員に代わって奨学金の一部または全額を返済機関に支払います。この制度は「代理返還」とも呼ばれ、2024年5月末時点で全国で2,023社 の企業等に登録が拡大しており、 6,868人に支援を行っています。
支援方法には主に2つあります。1つは企業が直接奨学金の返済を行う方法で、もう1つは従業員に奨学金返済手当を支給する方法です。支援額や期間は企業によって異なるため、詳細は制度を導入している企業のホームページなどをご参照ください。
この制度を導入することで、企業は優秀な人材の確保や離職率の低下といった効果が期待できます。
一方、従業員にとっては経済的負担が軽減され、キャリア形成に専念できるというメリットがあります。
参照元:日本学生支援機構|企業等の奨学金返還支援(代理返還)への対応
奨学金返済支援制度が注目されている背景

奨学金返済支援制度が注目を集めている背景には、以下のような社会的要因があります。
【奨学金返済支援制度が注目を集めている背景】
- 奨学金利用者の増加:高等教育の費用が高騰する中、奨学金を利用する学生が増加しています。
- 返済困難者の問題: 本人の所得によっては、奨学金の返済が困難になるケースもあります。
- 人材確保競争の激化: 少子高齢化による労働人口の減少に伴い、企業間の人材獲得競争が激しくなっています。優秀な人材を確保するため、福利厚生の充実が求められています。
- 若手社員の定着率向上: 新入社員の早期離職が問題となる中、奨学金返済支援制度は若手社員の定着率向上に効果があると期待されています。
これらの背景から、奨学金返済支援制度は企業と従業員の双方にとって有益な制度として注目を集めているのです。
従業員にとってのメリット・デメリット

奨学金返済支援制度は、従業員にとって大きなメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。
以下では、従業員の視点からこの制度のメリットとデメリットを詳しく解説します。
従業員にとってのメリット
従業員にとってのメリットは以下のとおりです。
【奨学金返済支援制度の従業員にとってのメリット】
- 経済的負担の軽減: 奨学金の返済額が減少するため、毎月の生活に余裕が生まれ、住宅ローンの組み方や結婚・出産などのライフイベントの計画が立てやすくなります。
- モチベーションの向上: 企業からの支援を受けることで、会社への帰属意識や仕事へのモチベーションが高まる可能性があり、昇進のチャンスにもつながります。
- 早期の返済: 支援を受けることで、通常よりも早く奨学金を返済できる可能性があり、将来的な金融面での自由度が高まります。
従業員にとってのデメリット
従業員にとってのデメリットは以下のとおりです。
【奨学金返済支援制度の従業員にとってのデメリット】
- 退職時のリスク: 多くの場合、制度利用中に退職すると支援が打ち切られます。場合によっては、既に受けた支援金の返還を求められる可能性もあります。
- 給与への影響: 奨学金返済支援が給与の一部として支給される場合、基本給が抑えられる可能性があり、長期的には昇給や退職金に影響が出る可能性があります。
- 税金の問題: 支援金が給与として扱われる場合、所得税や住民税の課税対象となり、結果的に、手取り額が期待したほど増えない可能性があります。
企業にとってのメリット・デメリット

奨学金返済支援制度は、企業にとっても様々なメリットとデメリットがあります。以下では、企業の視点からこの制度のメリットとデメリットを詳しく解説します。
企業にとってのメリット
企業にとってのメリットは以下のとおりです。
【奨学金返済支援制度の企業にとってのメリット】
- 優秀な人材の確保: 奨学金返済支援制度を導入することで、企業の魅力が向上し、優秀な新卒者や若手社員の採用に有利になります。とくに、奨学金の返済に悩む高学歴者の獲得につながる可能性があります。
- 従業員の定着率向上: 経済的支援により、従業員の満足度や帰属意識が高まり、離職率の低下が期待できます。特に、入社後3年以内の若手社員の定着に効果があるとされています。
- 企業イメージの向上: 社会貢献度の高い制度を導入することで、企業の社会的責任(CSR)活動の一環として評価され、企業イメージの向上につながります。
企業にとってのデメリット
企業にとってのデメリットは以下のとおりです。
【奨学金返済支援制度の従業員にとってのデメリット】
- コストの増加: 奨学金返済支援制度の導入には、直接的な支援金のほか、制度設計や運用にかかる人件費など、様々なコストが発生します。
- 制度設計の難しさ: 支援対象者の選定基準や支援額の決定、支援期間の設定など、公平で効果的な制度設計には多くの検討が必要です。
- 従業員間の不公平感: 奨学金を利用していない従業員や、既に返済を終えた従業員との間に不公平感が生じる可能性があり、職場の雰囲気が悪化するリスクがあります。
まとめ
奨学金返済支援制度は、従業員の経済的負担を軽減し、企業の人材確保・定着率向上に寄与する可能性のある制度です。従業員にとっては、経済的余裕やキャリア形成への集中といったメリットがある一方で、退職時のリスクや税金の問題などのデメリットも存在します。
企業にとっては、優秀な人材の確保や企業イメージの向上といったメリットがありますが、コストの増加や制度設計の難しさなどの課題もあります。
導入を検討する際は、企業の規模や財務状況、従業員のニーズなどを総合的に考慮し、慎重に検討する必要があるでしょう。また、導入後も定期的に効果を検証し、必要に応じて制度の見直しを行うことが重要です。