奨学金は多くの学生が利用する手段ですが、返還に関してはさまざまな疑問が生じることがあります。
その中でも、機関保証を利用した場合に支払った保証料が返ってくるかどうか、また、繰上返還を行うことでどのようなメリットが得られるのかは多くの人が気になるポイントでしょう。
本記事では、奨学金の機関保証に関連する保証料や繰上返還のメリット、具体的な手続きの流れについて詳しく解説します。
そもそも機関保証とは何か

そもそも機関保証とは、保証機関が奨学生の連帯保証をする制度のことです。
機関保証は一定の保証料の支払いが必要ですが、人的保証制度とは異なり連帯保証人・保証人を必要としないことが大きなメリットといえるでしょう。
なお、平成29年度以降の場合、第一種奨学金で所得連動返還方式を選択した場合は、機関保証制度を選択する必要があります。
奨学金の機関保証で保証料は返ってくる?

機関保証を選択した場合、奨学生は保証機関の連帯保証を受けるために、毎月の奨学金から差し引く形で保証機関に保証料を支払います。
この保証料が全額返ってくることはありませんが、支払った保証料の一部が返ってくるケースもあります。
保証料が返ってくるケースは以下のとおりです。
- 全額繰上返還をして、返還期間が短縮された場合
- 一部繰上返還をして、返還期間が短縮され、返還が完了した場合
- 日本学生支援機構の返還免除の適用を受け、返還が完了した場合
返ってくる時期としては返還完了通知が届いてから約3ヶ月後とされています。
また、返ってくる保証料は原則として、奨学金振込口座または振替用口座(リレー口座)となります。
具体的な返金額は利用している支払い状況によって異なるため、個別に確認する必要があります。
そもそも奨学金の繰上返還とは?

奨学金の繰上返還とは、通常の毎月の返還額に加えて、追加で一部または全部の返還を行うことを指します。これにより、利息の支払いが少なくなるだけでなく、返還期間も短縮することができます。
一部繰上返還を希望する場合には、繰り上げを希望する上限金額もしくは希望する繰上回数のどちらかを選択することとなります。繰上を希望する上限金額を選択した場合は、希望した金額内で繰上返還可能な回数を計算して金額を調整します。
奨学金の繰上返還は「短縮型」のみ
日本学生支援機構の奨学金では、短縮型の繰上返還のみを行うことが可能です。
一般的に金融機関の住宅ローンなどの繰上返還には、「軽減型」と「短縮型」の2つの方法が存在します。
軽減型は、返還期間を変えずに返還額を減額する繰上返還を指します。
一方で、短縮型は返還期間を短縮する方法で、毎月の返還額に変更はありませんが、返還期間が短くなる分、支払う利息の総額が減少します。つまり、短縮型の方が総返還額を抑える効果が高いと言えます。
奨学金の繰上返還をするメリット

奨学金の繰上返還にはいくつかのメリットがあります。
【奨学金の繰上返還をするメリット】
- 支払う利子が少なくなる
- 機関保証の保証料が一部返金される場合がある
順に解説します。
支払う利子が少なくなる
奨学金の繰上返還を行う最大のメリットは、支払う利子を減らせることです。
繰上返還をした場合、繰上げた返還期間の利子はかからないため、支払う利子が少なくなり最終的な返還総額も当初の予定よりも少なくなります。
機関保証の保証料が一部返金される場合がある
繰上返還を行った場合、機関保証の保証料が一部返金されることがあります。
保証料は貸与月額、貸与期間や返還期間等に基づいて算出されるため、早期に返還すれば、その期間分の保証料が返金対象となる可能性があります。ただし、返金額や条件は利用している保証機関によって異なるため、具体的な手続きは個別に確認が必要です。
奨学金の繰上返還可能なタイミングはいつ?

奨学金の繰上返還は、基本的にいつでも可能です。返還開始後であれば、毎月の返還に加えて任意のタイミングで繰上返還を行うことができます。
ただし、申込可能なスケジュールはスカラネット・パーソナルと郵送によって異なります。
スカラネット・パーソナルの場合は、日本学生支援機構のホームページに記載の「スカラネット・パーソナル繰上返還申込スケジュール」より、ご確認ください。
※スカラネット・パーソナル繰上返還申込スケジュールは2024年10月14日現在の情報です。
他方、繰上返還申込書を郵送する場合の受付期間は、繰上返還希望月の4か月前の振替日翌日から繰上返還希望月の1か月前の振替日となります。
奨学金の繰上返還はいくらからできる?
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繰上返還は全額または一部を繰り上げて返還でき、繰り上げる返還額は人によってそれぞれです。一部繰り上げを希望する場合は、上限金額もしくは希望する繰上回数のどちらかを選択し、金額を決定します。
たとえば毎月3万円を返還している人の場合は以下のようになります。
【返還上限金額を7万円とした場合】
・返済上限金額7万円/毎月の返還額3万円=2.3ヶ月
→毎月の返還額3万円単位での計算となるため、小数点以下を切り捨てて返還上限金額内で調整した2ヶ月が繰上回数となります。
【繰上回数を3回とした場合】
・毎月の返還額3万円×3ヶ月=9万円
奨学金の利子が詳細にどのくらいかかるのか知った上で、繰上返還を検討したい方は日本学生支援機構が提供する奨学金貸与・返還シミュレーションを活用すると良いでしょう。
奨学金の繰上返還の方法と流れ

ここまで奨学金を繰上返還を行った場合に保証料は返ってくるのかについてや、メリットなどを解説しました。
以下では実際に申し込む際の方法や流れを解説しますので、参考にしてください。
奨学金の繰上返還の方法
日本学生支援機構によると、奨学金の繰上返還の方法は以下のとおりです。
【奨学金の繰上返還の方法】
- スカラネット・パーソナル
- 繰上返還申込書に記載し郵送
日本学生支援機構のホームページにはスカラネット・パーソナルが利用できない場合に限り郵送の申し込みをするよう記載しており、原則スカラネット・パーソナルで申し込みを進めると良いでしょう。
スカラネット・パーソナルとは
スカラネットパーソナルは、奨学金を貸与・給付・返還中の方が、自身の奨学金に関する情報を閲覧・各種手続ができるサービスです。
パソコンやスマートフォンから申し込みが可能で、各種手続時間は、午前8時~翌日午前1時まで可能となっています。
スカラネット・パーソナルを利用するには日本学生支援機構の公式ホームページに記載している「スカラネット・パーソナルへようこそ(ログインページ)」より新規登録を行うと各種手続きが行えるようになります。
スカラネット・パーソナルで利用可能な各種手続きは以下のとおりです。
【スカラネット・パーソナルで利用可能な各種手続き】
- 第二種月額変更(減額)願の提出
- 転居・改姓・勤務先変更等の届出
- 振替用口座(リレー口座)登録・変更申込
- 繰上返還の申込
- 在学猶予願・在学猶予期間短縮願の提出
- 各種証明書の発行依頼
- あなたの奨学金情報の閲覧・確認
- 奨学金減額返還願・奨学金返還期限猶予願の提出、または作成・印刷
オンラインで多くの手続きが完了し、郵送などより時間もかからず便利なため活用してみてください。
まとめ
奨学金の返還において、機関保証を利用した際の保証料の一部返還や、繰上返還のメリットについて理解することは重要です。
繰上返還は、支払う利子の軽減や返還期間の短縮を可能にし、特に日本学生支援機構の奨学金では「短縮型」の繰上返還のみが適用されます。また、繰上返還に手数料はかからず、機関保証の保証料が一部返ってくることも期待できます。
本記事で解説した情報を踏まえ、自身に合った返還方法を検討する際の一助になりましたら幸いです。