「奨学金を申し込みたいのに、保証人を頼める人がいない」「親に頼んだら断られた」「親戚はみんな65歳以上で条件に合わない」——人的保証で申し込もうとして、ここで止まってしまう人は少なくありません。
先に結論をお伝えします。保証人がいなくても、日本学生支援機構(JASSO)の奨学金は借りられます。 保証人の代わりに保証機関が連帯保証する「機関保証」を選べばよく、申し込みの段階なら誰の承諾も要りません。すでに人的保証で採用された後でも、事情によっては機関保証へ切り替えられます。
この記事は「頼める人がいない・断られた」ときの対処法に絞って、いつ・どこで・何をすればよいかを手続きの順に整理します。誰が保証人になれるのかの細かい条件は奨学金の保証人の条件、65歳以上の祖父母に頼めるかは65歳以上の祖父母は保証人になれる?で扱っているので、あわせてご覧ください。
結論:保証人がいなくても「機関保証」で借りられる
JASSOの貸与奨学金(第一種・第二種)を申し込むときは、次のどちらかの保証制度を選びます(出典:JASSO 第一種奨学金の保証制度の選択)。
| 人的保証 | 機関保証 | |
|---|---|---|
| 誰が保証するか | 連帯保証人(原則父母)と保証人(4親等以内の親族)の2人 | 保証機関(公益財団法人 日本国際教育支援協会) |
| 保証人の選任 | 必要 | 不要(「本人以外の連絡先」の届け出のみ) |
| 費用 | 不要 | 保証料が必要(毎月の奨学金から差し引き) |
| 採用時の手続き | 返還誓約書に2人の自署・押印+印鑑登録証明書等の添付 | 返還誓約書+保証依頼書の提出 |
つまり、保証人を頼める人がいない場合の答えは「機関保証を選ぶ」の一つで、探し回る必要はありません。あとは自分がいまどの段階にいるかで手続きが変わります。
| いまの段階 | やること |
|---|---|
| 申込前(予約採用・在学採用) | 申込時に「機関保証」を選ぶ |
| 予約採用で人的保証を選んだが、進学までに保証人が見つからない | 進学届の提出時に機関保証へ変更できる |
| 人的保証で採用済み・在学中に保証人が保証できなくなった | やむを得ない事由なら学校を通じて機関保証へ変更 |
| 卒業後・返還中に保証人が保証できなくなった | 条件を満たせばJASSOに申し出て機関保証へ変更 |
それぞれの手順は後述します。
その前に:本当に「いない」のか、頼める範囲を確認する
機関保証を選ぶ前に、頼める人の範囲を正確に知っておくと、「親に断られた=もう無理」ではないことが分かります。JASSOの人的保証で必要なのは次の2人です(出典:JASSO 第一種奨学金の人的保証制度)。
- 連帯保証人:原則として父母。父母がいない等の場合は、兄弟姉妹・おじ・おばなど4親等以内の親族
- 保証人:本人および連帯保証人と別生計の、父母を除く4親等以内の親族(おじ・おば・兄弟姉妹・祖父母など)で、誓約日時点で65歳未満
よくある「詰まり方」と、実はまだ残っている選択肢を整理します。
| 状況 | 残っている選択肢 |
|---|---|
| 親が「連帯保証人にはなれない」と言う | 父母がいない等の事情がなければ連帯保証人は原則父母。父母に頼めない場合は機関保証が現実的 |
| 親は引き受けるが、保証人(2人目)がいない | 別居して生計が別の兄弟姉妹・おじおば・いとこ・祖父母(65歳未満)まで候補になる |
| 親戚が全員65歳以上 | 65歳以上でも「返還保証書」と収入・資産の証明書を出せる人なら保証人にできる(詳細は65歳以上の祖父母の記事) |
| 親族以外の知人・恩師に頼みたい | 4親等以内の親族でない人を選任する場合は、返還保証書と収入・資産の基準(給与収入320万円以上等)が必要。ハードルは高い |
なお、連帯保証人は保証人と違って「まず本人に請求してください」と主張できない点に注意が必要です。責任の重さの違いや、頼まれた側が確認しておきたいことは奨学金の連帯保証人とは?保証人との違い・条件・頼めないときの対処法にまとめています。
親族以外に頼むのは現実的か
JASSOは、4親等以内の親族でない人を連帯保証人・保証人にする場合、「返還を確実に保証できる人」に限るとしています。具体的には、次のいずれかの基準を満たし、返還誓約書の提出時に「返還保証書」と証明書類を添付できる人です(出典:同上)。
- (a)給与所得者なら年間収入320万円以上、給与所得者以外なら年間所得220万円以上(年金収入は給与として扱う)
- (b)預貯金残高+固定資産評価額が貸与予定総額以上(保証人は貸与予定総額の2分の1以上)
- (c)(a)と(b)の組み合わせ:(預金残高+評価額)÷16年+年間収入が320万円以上(所得の場合は220万円)
収入や資産の証明書を出してもらう必要があるため、知人や恩師にこれを頼むのは相当な負担をかけます。親族以外に頼むくらいなら機関保証を選ぶほうが、相手にも自分にも現実的です。返還保証書の書き方は返還保証書とは?添付書類も紹介で解説しています。
対処法1:申込時に「機関保証」を選ぶ
保証人が見つからないと分かった時点で申込前なら、手続きは最も簡単です。
申込時にやること
機関保証の申し込みは奨学金の申し込みと同時に、学校を窓口として行います。保証人の選任は不要で、代わりに「本人以外の連絡先」(JASSOが本人と連絡を取れないときに住所・電話番号を照会できる人)を指定します(出典:JASSO 第一種奨学金の機関保証制度)。
本人以外の連絡先は保証人ではないので、返還義務を負いません。親でも親戚でも、連絡がつく人であれば引き受けてもらいやすい役割です。
採用後にやること
採用後は「返還誓約書」と「保証依頼書(兼保証委託契約書)」を学校に提出します。人的保証のような印鑑登録証明書や収入証明書は不要です。保証料は奨学生証で通知され、毎月の貸与額から差し引かれた額が口座に振り込まれるため、自分で振り込む手間もありません。
予約採用で人的保証を選んでしまった場合
高校在学中の予約採用で人的保証を選んだあと、進学までに保証人が見つからないケースもあります。この場合、進学届の提出時に保証制度を変更できます。ただし進学届の提出後は、機関保証から人的保証への変更はできません(出典:JASSO FAQ 進学届提出時に保証制度(人的保証・機関保証)は変更できますか)。
人的保証の連帯保証人・保証人は、申込時点では候補を届け出るだけで、実際に自署・押印してもらうのは採用後の返還誓約書です。「頼めそうな人はいるが確約が取れていない」状態で進学届を出すと、返還誓約書の段階で行き詰まります。確約が取れていないなら、進学届の時点で機関保証に切り替えておくのが安全です。
対処法2:採用後に人的保証から機関保証へ変更する
すでに人的保証で採用されたあとに、連帯保証人・保証人が保証を続けられなくなった場合の手続きです。在学中と卒業後で窓口と条件が異なります。
在学中(貸与中)の場合
「やむを得ない事由」により連帯保証人・保証人を選任できない場合は、人的保証から機関保証へ変更できます。やむを得ない事由とは、連帯保証人または保証人の保証能力喪失(死亡・行方不明・意識不明等)や債務整理(破産等)です。手続きは学校に申し出て行います(出典:JASSO 人的保証から機関保証への変更(在学中))。
注意点は費用です。変更する場合は、貸与の始期にさかのぼって保証料を一括で支払う必要があります。たとえば2年目に切り替えるなら、1年目分の保証料もまとめて払うことになります。
なお、平成29年度(2017年度)以降の採用者で、第一種奨学金の返還方式を定額返還方式から所得連動返還方式に変更したい場合も、機関保証への変更が必要です。この場合も保証料は貸与始期にさかのぼって一括払いです。
卒業後(返還中)の場合
2004年度以降の採用者は、連帯保証人または保証人がやむを得ない理由(死亡・意識不明・債務整理等)で保証できなくなり、新たな人を選任できないときに、返還中でも機関保証へ変更できます。ただし次の条件があります(出典:JASSO 人的保証から機関保証への変更(卒業後))。
- 延滞していないこと
- 振替口座(リレー口座)による返還を行っていること
- 本人が破産・債務整理等の状態にないこと
- 保証料の一括振込が可能であること
流れは、①JASSOの奨学金相談センターに連絡して「保証の変更依頼書」を受け取る → ②所定の書類を提出 → ③審査後、保証機関(日本国際教育支援協会)から保証料の請求書が届く、という順です。
「頼める人がいなくなった」だけでは変更できない点に注意
在学中・卒業後とも、機関保証への変更が認められるのは死亡・債務整理などの事由がある場合です。「親と疎遠になった」「頼んでいた親戚に断られた」といった理由は、この事由には含まれていません。その場合は次の対処法3(別の人への変更)を検討することになります。保証人の当てが不確かなら、最初から機関保証を選んでおくのが、後の手続きを最も軽くします。
対処法3:保証人を別の人に変更する
連帯保証人・保証人が保証を続けられなくなったが、代わりを頼める親族がいる場合は、「変更届」で別の人に差し替えます。
| 在学中(貸与中) | 卒業後(返還中) | |
|---|---|---|
| 提出先 | 学校の奨学金担当窓口 | JASSOへ直接送付 |
| 書類 | 連帯保証人・保証人等変更届 | 連帯保証人変更届/保証人変更届 |
| 連帯保証人を変える場合の添付 | 新連帯保証人の印鑑登録証明書・収入に関する証明書類 | 同左(変更届の記入日から3か月以内発行) |
| 保証人を変える場合の添付 | 新保証人の印鑑登録証明書 | 同左 |
(出典:JASSO 連帯保証人等の変更(在学中)/連帯保証人・保証人の変更(卒業後))
新しく立てる人も選任条件を満たす必要があり、4親等以内の親族でない人や65歳以上の人を保証人にする場合は、「返還保証書」と資産等に関する証明書の添付も必要です。誰が条件を満たすかは奨学金の保証人の条件で判定できます。
機関保証を選ぶといくらかかる?2026年度の保証料の目安
「保証人がいないから機関保証」と決めたときに気になるのが費用です。保証料は貸与月額・貸与月数・返還期間などで決まり、毎年4月に改定されます。2026年度採用者の目安は次のとおりです(出典:JASSO 2026年度採用者の第二種奨学金保証料の目安・大学院以外PDF)。
第二種奨学金(有利子)・保証料月額
| 貸与月額 | 24か月(2年制専門学校など) | 48か月(4年制大学など) |
|---|---|---|
| 30,000円 | 856円 | 1,168円 |
| 50,000円 | 1,865円 | 2,218円 |
| 80,000円 | 3,212円 | 4,585円 |
| 100,000円 | 4,574円 | 5,732円 |
たとえば月5万円を2年間借りる場合、保証料は月1,865円、2年間の合計で約4.5万円(貸与総額120万円の約3.7%)です。月5万円を4年間なら月2,218円、合計約10.6万円(貸与総額240万円の約4.4%)になります(合計と比率は月額×月数の編集部計算)。
保証料は貸与期間中に差し引かれるだけで、返還期間中の支払いはありません。また、繰上返還で返還期間が短縮された場合などは保証料の一部が返戻されることがあります(詳しくは機関保証で保証料は返ってくる?)。第一種奨学金の金額や貸与額別の総額シミュレーションは機関保証の保証料は高い?2026年度の保証料月額にまとめています。
「無料」の人的保証と比べてどう考えるか
人的保証は保証料がかからない代わりに、本人が返せなくなったときの負担を親族が無償で引き受けます。連帯保証人は残額の全額、保証人は残額の2分の1を請求される立場です(保証人になるリスク参照)。保証人を頼めない状況で機関保証を選ぶのは、「保証料を払って親族に迷惑をかけない選択をした」ということでもあります。どちらを選ぶべきかの判断基準は機関保証と人的保証はどっちがいい?で詳しく比較しています。
機関保証以外の選択肢
保証人がいない状況で検討できる制度は、機関保証だけではありません。奨学金と併用できるものもあります。
給付型奨学金(返還不要)
JASSOの給付奨学金(高等教育の修学支援新制度)は返還を要しない奨学金で、世帯収入の基準を満たしていれば「学ぶ意欲」があれば支援を受けられます。返還がないため、貸与奨学金のような連帯保証人・保証人の選任はありません。2025年度からは多子世帯を対象に、所得制限なく授業料等減免が行われています(出典:JASSO 給付奨学金)。
給付型は大学・専門学校独自のもの、自治体、民間団体・企業のものもあります。募集要項と締切を確認し、貸与奨学金と組み合わせて必要額を減らす発想が有効です。
国の教育ローン(日本政策金融公庫)
日本政策金融公庫の教育一般貸付(国の教育ローン)は、保護者が借りる融資で、JASSOの奨学金と併用できます。融資限度額は子ども1人につき350万円以内(一定の要件に該当する場合は450万円)、金利は年4.05%(固定金利・保証料別、令和8年7月1日現在)です。保証は(公財)教育資金融資保証基金か連帯保証人のどちらかを選べるため、保証人を立てられない場合は保証基金(保証料を融資金から一括で差し引き)を利用できます(出典:日本政策金融公庫 教育一般貸付 ご利用条件)。
ただし奨学金と違って借りるのは保護者で、世帯年収の上限があり、在学中から返済が始まる点は注意が必要です。
学費保証
奨学金を借りるのではなく、学費そのものの支払いを分割にしてもらう手段として、専門学校などで導入されている学費保証があります。学校が提携する保証会社が学費の支払いを保証し、学生・保護者は月々の分割で支払う仕組みです。詳しくは学費保証とは?メリットや申し込み方法をご覧ください。
よくある質問
Q. 連帯保証人だけいて、保証人(2人目)がいません。1人だけで人的保証は申し込めますか?A. できません。人的保証は連帯保証人と保証人の2人がそろって成立します。2人目が見つからない場合は機関保証を選んでください。
Q. 機関保証を選んだら、親には何も頼まなくてよいですか?A. 保証人としての承諾は不要です。ただし「本人以外の連絡先」の指定は必要で、未成年者の申し込みには親権者の自署・押印が要ります。返還誓約書にも本人以外の連絡先となる人の自署が必要です。
Q. 機関保証にすると、返さなくてよくなりますか?A. なりません。保証料を払っていても返還義務は本人にあります。延滞が続くと保証機関が代位弁済し、その後は保証機関から本人に原則一括で請求され、遅延損害金(年10%)も加算されます(出典:JASSO 第一種奨学金の機関保証制度)。詳しくは機関保証とは?へ。
Q. 人的保証で申し込んだあと、やっぱり機関保証に変えたいです。A. 予約採用なら進学届の提出時に変更できます。採用後は、連帯保証人・保証人の死亡・債務整理などやむを得ない事由がある場合に限られ、保証料は貸与始期にさかのぼって一括払いです。逆の機関保証→人的保証への変更は、進学届提出後はできません。
Q. 親が自己破産していて連帯保証人になれません。A. 債務整理中(破産等)の人は連帯保証人・保証人になれません。父母がいない等の場合は4親等以内の親族を連帯保証人にできますが、頼める人がいなければ機関保証を選びます。条件の詳細は奨学金の保証人の条件で確認してください。
まとめ
- 保証人がいなくても奨学金は借りられる。機関保証を選べば保証人の選任は不要で、「本人以外の連絡先」を届け出るだけでよい
- 申込時に選ぶのが最も簡単。予約採用で人的保証を選んでいても、進学届の提出時に機関保証へ変更できる(逆方向は不可)
- 採用後の人的→機関への変更は、保証人の死亡・債務整理などやむを得ない事由がある場合に限られ、保証料は貸与始期にさかのぼって一括払い。「断られた」だけでは対象にならない
- 機関保証の保証料は、月5万円・2年間で月1,865円程度(2026年度・第二種)。返還期間中の支払いはない
- 親族以外に頼むには収入・資産の証明が必要でハードルが高い。親族以外に頼むより機関保証のほうが現実的
- 給付型奨学金、国の教育ローン(保証基金の利用可)、学費保証も、保証人なしで使える選択肢
保証人が見つからないことは、進学を諦める理由にはなりません。申し込みの段階で機関保証を選んでおけば、あとから誰かに頭を下げる必要もなくなります。
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