貸与奨学金を利用する際、避けて通れないのが保証制度の選択です。
奨学金の保証制度には「人的保証」と「機関保証」の2つの選択肢がありますが、実際にどちらを選択するべきなのか悩まれている方も多いのではないでしょうか。これら2つの保証制度には異なる特徴があり、人によって選択するべき制度も異なってきます。
本記事では、両者の違いや特徴について詳しく解説し、実際に奨学金を利用する際の保証制度の選び方についてお伝えします。機関保証の「保証料」についても触れていますので、ぜひ最後までご覧ください。
人的保証・機関保証とは

奨学金を借入する際には、必ず申し込み時に「人的保証」か「機関保証」のどちらかを選択する必要があります。まずはそれぞれがどのような制度なのか、その特徴について見ていきましょう。
人的保証とは
人的保証とは、一定の条件にかなった人に連帯保証人と保証人を引き受けてもらう制度です。
人的保証の保証人の条件は、連帯保証人の場合は原則として父母またはこれに代わる人、保証人の場合は原則として4親等以内の親族で本人及び連帯保証人と別生計の人となります。
機関保証とは
機関保証とは、日本学生支援機構の奨学金を利用するにあたって、奨学生が一定の保証料を支払うことで、公益財団法人日本国際教育支援協会が連帯保証する制度です。
奨学生は一定の保証料を保証機関に対して支払う必要があり、奨学金は貸与を受けた本人が必ず返還しなければなりません。奨学生が奨学金の返還を一定期間延滞した場合、奨学生に代わって保証機関が返済をします。延滞した場合、個人信用情報機関に延滞情報が登録され、その情報は金融機関より参照されることがあります。
保証機関から本人には奨学金の未返済額及び延滞金等が一括して請求されます。請求に応じない場合は、法的措置(財産、給与の差し押さえ等)となる場合もありますので注意が必要です。
機関保証の「保証料」は高い?
ここまでは人的保証と機関保証の基本的な特徴について解説してきましたが、これら2つの保証制度を比較して機関保証の費用的負担が大きいと言われる要因である「保証料」は一体どれくらいかかるのでしょうか。
日本学生支援機構の場合、機関保証の保証料は、貸与月額、貸与月数、貸与利率(第二種のみ)、返還期間等により異なり、月額で数百円から数千円と幅広く、総額では数万円から数十万円になることもあります。
保証料は別途支払いが発生することはなく、奨学金から差し引く方法で支払われます。そのため奨学生が何か別途で保証期間に振込を行う必要や手数料が発生することはありません。
また、繰上返還や一部繰上返還を行うことにより、返還期間が短縮されたり、保証料が一部返戻される場合があります。そのため、繰上返還を検討されている場合は当初支払う予定の保証料に比べて実際の支払額が少なくなる可能性もあるでしょう。
具体的な保証料の金額などの目安について気になる方は日本学生支援機構のホームページにある返済のシミュレーションで確認することが可能です。
このように人的保証と機関保証にはそれぞれ異なる特徴があります。人的保証は保証料負担がないものの、保証人となる方のご負担があります。一方、機関保証は保証人が不要なものの、保証料の負担があります。
保証制度を選択する際は、ご自身の状況や保証人となる方のご負担、将来の返済計画を考慮し、慎重に判断することが重要です。
参照元:2024年度 保証料月額(目安)
参照元:機関保証に加入している方へ
人的保証のメリット・デメリット

機関保証は保証料の負担があることから「高い」と言われていますが、それならば保証料の必要のない人的保証が良いのでしょうか?
ここからは人的保証・機関保証のメリット・デメリットをそれぞれ解説していきますので、実際にどちらが良いか自身の状況に合わせて検討してみてください。
人的保証のメリット
人的保証のメリットとして、「保証料の支払いがない」という点が挙げられます。人的保証は機関保証と異なり保証料が発生しないため、最終的な総返済額が機関保証に比べて安くなります。
保証料の金額は貸与月額・貸与月数・貸与利率などの条件によっては高額になる場合もあります。そのため、少しでも奨学金の金額を多く受け取りたいという方については人的保証を利用することがおすすめといえるでしょう。
人的保証のデメリット
人的保証のデメリットとしては、「保証人を見つけるのが困難な人は利用が難しい」という点が挙げられます。人的保証の保証人要件は年齢など様々な条件を満たしている必要があり、そもそも身近に保証人になってくれる人を探すのが難しいというケースも考えられます。そのような場合については、人的保証が難しいため、機関保証を利用することになります。
機関保証のメリット・デメリット

では、機関保証の利用にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。それぞれ解説をしていきます。
機関保証のメリット
機関保証のメリットとして「父母や親族に迷惑をかける心配がない」という点が挙げられます。
機関保証の場合は、人的保証とは異なり保証人を探す必要がないため、父母や親族などに迷惑をかける心配や金銭的に負担をかけてしまうリスクはありません。
機関保証のデメリット
機関保証のデメリットとして、「支払い総額が大きくなる」という点が挙げられます。
機関保証は連帯保証人や保証人を立てる必要がない代わりに月々保証料を支払う必要があります。そのため、人的保証を利用する場合に比べて、最終的な返還額が大きくなってしまいます。
まとめ
本記事では人的保証と機関保証の特徴とそれぞれのメリット・デメリットについて解説してきました。機関保証は保証料がかかりますが、他の人に負担をかけずに奨学金を利用できる安心感があります。
一方、人的保証は保証料がかからず総返還額を抑えられますが、保証人との関係性や保証人の選任に条件があるなど、借入までのハードルが高いことがあります。どちらを選ぶべきかについては、自身の経済状況、家族関係、将来のキャリアプランなどを総合的に考慮し、慎重に判断することが大切です。
また、どちらの保証制度を選択したとしても、奨学生自身が責任を持って返還する必要があることには変わりありません。保証制度選択後も計画的な返還を心がけ、必要に応じて日本学生支援機構などの相談窓口を活用することをおすすめします。