奨学金を借りる際には、保証人や連帯保証人の選任が必要な場合があります。これらの役割は、借りた奨学金を返済できなくなった場合に返済義務が発生するもので、万が一のリスクを知っておくことが大切です。
本記事では、奨学金の保証人と連帯保証人の違い、保証人や連帯保証人に関連する奨学金のリスクについて詳しく解説します。
奨学金の保証人・連帯保証人とは|それぞれの違いは?

奨学金を借りる際、保証人と連帯保証人を選ぶことが必要となる場合があります。保証人は借り手が返済できなくなった際に返済義務を負う立場で、連帯保証人はより重い責任を持ちます。
具体的には、以下のような権利に違いがあります。
【保証人・連帯保証人で異なる主な点】
- 分別の利益
- 催告の抗弁権
- 検索の抗弁権
以下では、それぞれについて詳しく解説していきます。
分別の利益が異なる
保証人と連帯保証人の最大の違いの一つが分別の利益にあります。分別の利益とは、複数の保証人がいる場合に、債権者に対して自分の負担分だけを支払うことを主張できる権利です。
保証人は、他の保証人とともに負担額を分割して支払う権利が認められています。つまり、複数の保証人がいる場合は自分の責任の範囲内でしか返済義務が生じません。
一方で、連帯保証人にはこの分別の利益が適用されず、奨学生が返済できなくなった場合、全額を支払う義務があります。これにより、連帯保証人は他の保証人の存在に関係なく、全額返済の責任を負うことになるため、その責任は非常に重いと言えます。そのため、連帯保証人を引き受ける際には、慎重な判断が必要です。
催告の抗弁権が異なる
催告の抗弁権とは、保証人が債権者から請求された際に、主債務者に請求するよう主張できる権利です。
保証人は、この催告の抗弁権を行使することができるため、奨学生が返済を滞ったとしても、保証人がすぐに支払いを求められるわけではありません。債権者はまず主債務者に対して返済を請求し、その後に保証人に対して請求を行います。
しかし、連帯保証人にはこの催告の抗弁権が認められていません。したがって、奨学生が返済を滞った場合、債権者は直接連帯保証人に対して返済を請求できるため、連帯保証人は即座に支払い義務を負うことになります。
検索の抗弁権が異なる
検索の抗弁権とは、主債務者に強制執行が可能な財産がある場合、保証人が主債務者の財産を強制執行するよう主張できる権利です。
保証人は、この検索の抗弁権を行使することで、自身が即座に支払いを行うのではなく、主債務者の財産を差し押さえることを優先するよう要求できます。
しかし、連帯保証人には検索の抗弁権がありません。そのため、連帯保証人は主債務者の財産状況に関わらず、返済義務を負うことになります。
これも連帯保証人の負担を重くしている大きな要素であり、連帯保証人を引き受ける際に注意すべき重要な点です。
奨学金のリスク|返済ができなくなったら

奨学金の返済が滞ると、借り手だけでなく、保証人や連帯保証人にも返済義務が生じるリスクがあります。
想定されるリスクは以下のとおりです。
【奨学金が返済できなくなった場合のリスク】
- 日本学生支援機構や保証期間から返済の催促
- 延滞でブラックリストに載る可能性もある
順に解説していきます。
日本学生支援機構や保証機関から返済の催促
奨学金の返済が滞った場合、日本学生支援機構や委託された債権回収機関から返済の催促が行われます。
最初は書面や電話で督促されますが、返済が行われない場合にはさらに厳しい措置が取られることになります。
とくに、保証人や連帯保証人に対しても同様に催促が行われるため、本人だけでなく周囲の人々にも迷惑がかかる可能性があります。保証人や連帯保証人にとって、奨学生が返済を滞らせた場合の影響は大きく、最悪の場合、財産の差し押さえなどの法的措置が取られる可能性もあります。
督促が続くと、最終的には債務整理や強制執行といった状況に発展する可能性があるため、返済の遅れが発生した場合は速やかに対策を講じることが重要です。
延滞でブラックリストに載ることもある
奨学金の返済期日の前月末時点で返済が滞っている場合、個人信用情報機関への登録に関する注意喚起を目的としたSMSや通知文書が送付されます。
延滞3ヶ月以上が経過すると信用情報機関に登録され、いわゆる「ブラックリスト」に載る可能性があります。
奨学金の返済が困難になった場合、ブラックリストに登録される前に返済の猶予や減額措置を利用することが重要です。
ブラックリストに載るとどうなる?
ブラックリストに登録されると、日常生活に多くの影響があります。
たとえば、クレジットカードの利用や新規契約ができなくなり、現在保有しているカードも強制解約される可能性があります。また、住宅ローンや自動車ローンなどの新たな借り入れができず、賃貸契約においても賃貸保証会社を通した審査に通らない場合があります。とくに、信販系の賃貸保証会社を利用する物件では、信用情報を照会され、審査が通らないことが一般的です。
また、携帯電話の分割購入も制限され、一括払いでの購入を余儀なくされることがあります。さらに、ローンや奨学金の保証人にもなれず、家族や友人の契約をサポートすることが難しくなります。
このように、ブラックリストに登録されることで金融取引などが大幅に制限されるため、登録前に返済計画を見直し、必要な救済制度を活用することが重要です。
返済が厳しい場合には救済制度を利用する

奨学金の返済が難しい場合には、延滞する前に救済制度を利用しましょう。
日本学生支援機構が用意している救済制度は以下のとおりです。
【日本学生支援機構の救済制度】
- 減額返還制度
- 返還期限猶予制度
順に解説していきます。
減額返還制度
減額返還制度は、最大で15年間にわたり奨学金の返済額を減らすことができる制度です。
この制度を利用することで、返済額を一時的に減額し、負担を軽減することができます。この制度の適用条件としては以下のとおりです。
- 災害、傷病、その他経済的理由により奨学金の返還が困難であること
- 願出及び審査の時点で延滞していないこと
- 口座振替(リレー口座)加入者であること
- 月賦返還であること
本制度は一時的な負担を軽減することはできますが、総支払額が減額されるものではないことに留意しましょう。
返還期限猶予制度
返還期限猶予制度は、奨学金の返済を一時的に猶予することができる制度です。奨学生が返済が困難な状況にある場合、最長で10年間、返済を猶予することが可能です。
この制度は、病気や失業、経済的困難に直面した場合に申請することができ、猶予期間中は返済義務が一時的に停止されます。ただし、猶予期間が終了した後は、通常通りの返済が再開されます。
返還期限猶予には(1)一般猶予(2)猶予年限特例又は所得連動返還型無利子奨学金の返還期限猶予の2種類がありますので、それぞれ自分に合った方を選択すると良いでしょう。
まとめ
奨学金の保証人や連帯保証人には、それぞれ異なる責任が伴います。とくに連帯保証人は、保証人に比べてより重い責任を負うため、慎重な判断が求められます。
また、奨学金の返済が滞った場合、保証人や連帯保証人にも返済義務が生じ、最悪の場合、財産差し押さえやブラックリストへの登録といったリスクがあります。
返済が厳しい場合には、日本学生支援機構の救済制度を活用し、負担を軽減することが重要です。
事前にしっかりと奨学金のリスクを理解し、適切な対応を取ることで、トラブルを未然に防ぐようにしましょう。