奨学金の保証人になるリスクは?頼まれた側が引き受ける前に知っておくべきことを解説

奨学金の保証人になるリスクは?トラブルになった際の対処法も解説

親族から「奨学金の保証人になってほしい」と頼まれたら、どう答えるべきでしょうか。

奨学金の人的保証における保証人は、書類に押印するだけの形式的な役割ではありません。本人と連帯保証人が返せなくなったとき、代わりに返す法律上の義務を負う立場です。一方で、保証人の責任には法律上の上限があることや、引き受けた後にできるリスク管理があることは、あまり知られていません。

この記事では、頼まれた側の視点に立って、引き受けるリスク・法律で決まっていること・引き受ける前の確認事項・トラブルが起きたときの対処法を整理します。


目次

まず整理:連帯保証人と保証人では責任の重さが違う

奨学金の人的保証では「連帯保証人」と「保証人」の2人を立てます。同じ保証でも、法律上の立場は大きく異なります。

権利内容連帯保証人保証人
催告の抗弁権「先に本人に請求して」と主張できる×○
検索の抗弁権「先に本人の財産から回収して」と主張できる×○
分別の利益負担額が頭数で割った分に限られる×○

つまり、連帯保証人(原則父母)は請求されたら全額を支払う義務を負い、保証人(おじ・おば・兄弟姉妹など)は分別の利益により残額の2分の1が負担の上限になります(詳しくは後述)。

とくに連帯保証人は、請求されたら全額を支払う義務を負う立場です。引き受ける前に確認しておきたい点は奨学金の連帯保証人とは?保証人との違い・条件・頼めないときの対処法を参考にしてください。

なお、そもそも誰が保証人になれるのか(別生計の4親等以内の親族・65歳未満などの選任条件)は、奨学金の保証人の条件でなれない人はいる?で一覧にしています。本記事では条件の話は省き、「引き受けたらどうなるか」に絞ります。


奨学金の保証人になる6つのリスク

日本学生支援機構(JASSO)の奨学金を例に、保証人・連帯保証人が実際に直面しうるリスクを具体的に見ていきます。

リスク1:督促の連絡が自分に来る

本人の返還が滞ると、JASSOや委託を受けた債権回収会社から、連帯保証人・保証人に督励状の送付や電話による督促が行われます。JASSOの電話督促は次のように行われます。

  • JASSO職員のほか、業務委託された債権回収会社から行われる場合がある
  • 電話の時間帯は平日・休日ともに9時〜21時
  • 自宅・携帯に連絡がつかない場合などには、勤務先に電話がかかることもある

(出典:JASSO 督促)

リスク2:延滞金を含めて請求される

保証の範囲は元金だけでなく、利息と延滞金にも及びます。延滞金は、延滞した割賦金に対して年3%の割合で日数に応じて加算されます(出典:JASSO 返還のてびき2025年度・ダイジェスト版)。放置するほど請求額は膨らみます。

リスク3:一括請求される可能性がある

支払能力があるにもかかわらず返還を著しく怠ったと判断された場合などには、返還期限が来ていない分も含めた残額・利息・延滞金の一括返還が請求されます。月々の割賦金なら数千円〜1万円台でも、一括請求では数百万円になり得ます。

リスク4:裁判・強制執行まで進む可能性がある

一括請求にも応じない場合、次の法的措置に進みます。

  1. 支払督促予告
  2. 裁判所への支払督促申立
  3. 仮執行宣言付支払督促申立
  4. 強制執行(給与・財産の差し押さえ)

支払督促申立以降にかかった費用は返還者側の負担になります(出典:JASSO 人的保証(法的措置))。

リスク5:本人が自己破産しても、保証人の義務は消えない

自己破産で返済を免除されるのは、申し立てた本人だけです。本人が自己破産すると、債権者は連帯保証人・保証人に請求先を移すため、むしろ保証人への一括請求が現実化します。

リスク6:責任が10〜20年続く

保証の期間は貸与中と返還中の全期間です。JASSOの返還は最長20年に及ぶため、引き受けた時点から最大四半世紀近く、自分の家計に「偶発的な数百万円の支払い義務」を抱え続けることになります。自分の定年やライフイベントと重なる時期まで責任が続く点は、引き受け判断の重要な材料です。


法律で決まっていること:保証人を守るルールも知っておく

リスクだけでなく、保証人の側を守る確定したルールもあります。ここは引き受ける前に必ず押さえてください。

保証契約は書面がなければ無効

保証契約は、書面(返還誓約書など)でしなければ効力を生じません(民法446条2項)。口約束の「保証するよ」だけで義務を負うことはありません。

保証人の負担は残額の2分の1(分別の利益)

JASSOの人的保証は連帯保証人と保証人の2人で保証するため、保証人には民法上の「分別の利益」があり、負担すべき額は返還残額の2分の1です。

かつてJASSOは保証人に残額全額を請求する運用を行っていましたが、2022年5月の札幌高裁判決(機構側敗訴・上告せず確定)を受けて、保証人には返還未済額の2分の1を請求する取り扱いに変更し、過去に2分の1を超えて弁済していた保証人への返金も行われました(参考:Yahoo!ニュース(今野晴貴氏)「奨学金の返済が『半額』に?」)。

もし保証人として全額の請求を受けたら、自分の立場が「保証人」か「連帯保証人」かを返還誓約書で確認してください。保証人であれば、2分の1を超える部分の支払い義務はありません。

2020年の民法改正:極度額のルールと保証人への情報提供

2020年4月1日施行の改正民法では、個人が保証人になる契約のルールが大きく変わりました(出典:法務省「保証に関するルールが大きく変わります」)。

  • 極度額(465条の2):賃貸借の連帯保証のように、将来の不特定の債務を保証する「個人根保証契約」は、書面で極度額(上限額)を定めなければ無効になりました。一方、奨学金の人的保証は、返還誓約書で貸与総額・利息・延滞金という保証の範囲があらかじめ特定されている保証契約です。「上限が青天井」なのではなく、引き受ける時点でいくらの債務を保証するのかを書面で確認できます
  • 履行状況の情報提供(458条の2):本人から頼まれて保証人になった人は、債権者に対して、本人の返済状況(残額・延滞の有無など)の情報提供を請求できるようになりました。「知らないうちに延滞が膨らんでいた」を防ぐ手段が法律で用意されています

頼まれたら:引き受ける前に確認したい5つのこと

1. 借入総額・毎月の返還額・返還期間を数字で共有してもらう

「いくら借りて、卒業後に毎月いくらを何年返すのか」。この3つをJASSOの奨学金貸与・返還シミュレーションなどで試算し、書面で共有してもらいましょう。ここを曖昧にしたまま引き受けるのが、トラブルの最大の入り口です。

2. 自分の立場と負担上限を確認する

連帯保証人なら全額、保証人なら残額の2分の1。どちらを頼まれているのかで責任はまったく違います。

3. 「最悪のケース」で自分が払えるかを考える

延滞・一括請求が現実になったとき、自分の家計で対応できるか。10年後・20年後の自分の状況(退職・住宅ローン・介護など)まで含めて考えてください。

4. 本人・家族の返還計画を聞く

卒業後の進路の見通し、連帯保証人(父母)の状況も含めて、返還が現実的な計画になっているかを確認します。

5. 断る選択肢と「機関保証」を知っておく

引き受けないことは、決して薄情ではありません。JASSOには保証機関が連帯保証する機関保証があり、保証人を立てなくても奨学金は借りられます(詳しくは奨学金の保証人が不要な機関保証とは?)。「保証人にはなれないが、機関保証という方法があるよ」と伝えることは、関係を壊さずに断る現実的な答え方です。人的保証と機関保証の違いは人的保証とは?にまとめています。


引き受けた後にできるリスク管理

保証人になった後も、リスクを下げる打ち手はあります。

  • 返還状況を定期的に確認する:年に1回など、本人に返還状況を聞く機会を作る。必要なら民法458条の2に基づき、JASSOに履行状況の情報提供を求めることもできます
  • 返還が苦しそうなら、延滞する前に救済制度を促す:JASSOには毎月の返還額を2分の1・3分の1・4分の1・3分の2に減額して期間を延ばす減額返還や、返還を先送りする返還期限猶予、在学中の在学猶予があります。延滞してからではなく、苦しくなりそうな段階で申請するのが重要です(参考:奨学金の返し方は?)
  • 自分の住所変更などは届け出る:連絡が取れない状態は、督促の飛び越えや手続きの遅れにつながります
  • 保証を続けられなくなったら変更届:保証人側の死亡・債務整理などの場合は「連帯保証人・保証人変更届」により変更や、やむを得ない事由による機関保証への切り替えの対象になります

実際に督促・請求が来たときの対処法

万一、自分のもとに督促が届いたら、次の順で動いてください。

  1. 請求内容を確認する:誰の・いくらの・いつからの延滞か。自分が保証人なら、請求額が残額の2分の1になっているかも確認する
  2. 放置しない:無視すると一括請求・法的措置へ確実に進みます。支払えない場合でも、まず連絡して事情を伝えることが重要です
  3. 本人・連帯保証人と連絡を取る:本人がまだ返せる状況なら、減額返還・返還期限猶予の申請で保証人への請求を止められる可能性があります
  4. 支払った分は本人に請求できる(求償権):保証人が代わりに返還した場合、その分を本人に請求する権利(求償権)があります。支払いの記録は必ず残しておきましょう
  5. 専門家に相談する:金額が大きい場合や本人と連絡が取れない場合は、法テラスや弁護士・司法書士に早めに相談を。本人に多重債務がある場合は、任意整理などの債務整理で奨学金以外の負担を減らし、延滞リスクを下げられることもあります

なお、延滞が3か月以上続くと、奨学生本人の情報が個人信用情報機関に登録され、クレジットカードやローンの審査に影響します。この仕組みは奨学金の保証人のリスクとは|ブラックリストに載ることもある?で詳しく解説しています。


よくある質問

Q. 保証人を断ったら、本人は奨学金を借りられなくなりますか?A. いいえ。機関保証を選べば、保証人を立てずに借りられます。保証料(2026年度の目安で貸与総額の4〜6%程度)はかかりますが、断ることで進学を妨げるわけではありません。

Q. 保証人になると、自分のローンやクレジットカードに影響しますか?A. 保証人になったこと自体が個人信用情報機関に登録されることはありません。延滞情報として登録されるのは奨学生本人です。ただし、住宅ローンなどの審査で保証債務の申告を求められた場合は、申告が必要になることがあります。

Q. 途中で保証人をやめられますか?A. 一方的にはやめられません。死亡・破産などやむを得ない事由がある場合に、別の人への変更や機関保証への切り替え(保証料は遡って一括払い)が認められる仕組みです。

Q. 保証人が全額を請求されたらどうすればいいですか?A. まず返還誓約書で自分が「保証人」であることを確認してください。保証人であれば分別の利益により負担は残額の2分の1が上限です。現在のJASSOは保証人に2分の1を請求する取り扱いですが、疑問があれば支払う前にJASSOへの確認や専門家への相談をおすすめします。


まとめ

  • 奨学金の保証人は、本人と連帯保証人が返せないときに代わりに返す法律上の義務を負う。督促・延滞金・一括請求・法的措置・本人の自己破産時の請求と、リスクは具体的にある
  • ただし上限もある。保証人の負担は残額の2分の1(連帯保証人は全額)。2022年以降、JASSOも保証人には2分の1を請求する取り扱い
  • 2020年の民法改正で、保証人は本人の返済状況の情報提供を請求できるようになった。引き受けた後のリスク管理に使える
  • 引き受ける前に「総額・毎月の返還額・期間」を数字で共有してもらい、最悪のケースで自分が払えるかを考える
  • 断る選択肢はある。機関保証を伝えることは、関係を壊さない現実的な答え方

保証は「信頼の証」ではなく「法律上の債務」です。情に流されて即答せず、数字とルールを確認してから答えを出してください。

※本メディア「スクモア」は、機関保証・家賃保証事業を行う全保連株式会社が運営しています。

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執筆者

大学卒業後、金融機関にてリテール業務・法人融資業務などを経験。現在は金融・ライフスタイル領域を中心に年間1,000記事以上の記事執筆や数百万PVの金融系メディアのディレクションも行っている。

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