「奨学金に採用されたのに、入学金の支払いに間に合わない」——合格後に多くの人がぶつかる問題です。最初に結論をお伝えします。
- 日本学生支援機構(JASSO)の奨学金は、予約採用でも進学後にしか振り込まれません。最も早い初回振込でも4月21日(4月分)で、合格後すぐに求められる入学金には使えません
- 入学前のお金を用意する方法は、①学校に延納・分納を相談 ②国の教育ローン(保護者が借りる・最大350万円) ③入学時特別増額貸与奨学金+ろうきんの「入学時必要資金融資」(つなぎ融資・最大50万円) ④生活福祉資金の就学支度費(住民税非課税程度の世帯・最大50万円・無利子)の4つ
- どれも審査や手続きに時間がかかります。合格が決まったら、入学金の納付期限から逆算してすぐ動くのが鉄則です
この記事では、JASSO・日本政策金融公庫・労働金庫の一次資料をもとに、それぞれの条件・上限額・お金が入るまでの時間を比べ、状況別にどれを使えばよいかを整理します。
なぜ奨学金は入学金に間に合わないのか
JASSOの貸与奨学金案内には「進学前には振り込まれません!」「進学前に必要となる『入学金』等には利用できません」と明記されています(出典:JASSO 2027年度大学等予約採用 貸与奨学金案内)。
奨学金は、進学後に学校から受け取るIDで「進学届」を提出して、はじめて正式に採用されます。初回振込日は進学届を出した時期で決まります。
| 貸与月 | 振込日 |
|---|---|
| 4月分 | 4月21日 |
| 5月分 | 5月16日 |
| それ以外の月 | 毎月11日 |
(出典:同案内「奨学金振込日」。土日祝日の場合は前営業日。初回振込が5月以降になると4月分からまとめて振り込まれる)
一方、入学金は合格後の入学手続きで納めるのが一般的で、推薦・総合型選抜で秋に合格した場合は高校3年の秋〜冬に支払期限がきます。つまり合格から最初の振込まで、数か月の「すき間」ができるのです。
必要な金額の目安は次のとおりです。
| 学校 | 入学金の目安 | 出典 |
|---|---|---|
| 専門学校(東京都内・私立・昼間部の平均) | 181,000円(初年度納付金の合計は1,301,000円) | 東京都専修学校各種学校協会 令和6年度調査 |
| 国立大学(標準額) | 282,000円 | JASSO案内(令和7年4月時点) |
| 私立大学(平均) | 240,365円 | JASSO案内(文部科学省 令和7年度入学者調査) |
(出典:東京都専修学校各種学校協会「令和6年度 専修学校各種学校調査統計資料」/JASSO 2027年度 貸与奨学金案内「進学前の資金の準備」)
専門学校では入学金と一緒に前期分の授業料・実習費などを入学前に求められることもあり、その場合は入学金だけでは済みません。志望校の募集要項で「入学前に納める総額」を必ず確認してください。学費の全体像は専門学校の学費はいくら?【まとめ】、支払いのタイミングは専門学校の学費はいつ払う?で詳しく解説しています。
入学前のお金を用意する方法の比較表
| 方法 | 借りる人 | 上限額 | 利子 | お金が動くまでの目安 | 主な条件 |
|---|---|---|---|---|---|
| ① 学校に延納・分納を相談 | ― | ― | ― | 学校の判断次第 | 学校に制度・配慮があること |
| ② 国の教育ローン | 保護者 | 350万円(自宅外通学などは450万円) | あり(年4.05%・固定) | 審査10日前後+融資まで10日前後 | 世帯年収の上限あり |
| ③ ろうきん「入学時必要資金融資」 | 本人 | 入学時特別増額で選んだ額(10万〜50万円) | あり | 審査期間は申込時期により異なる | 入学時特別増額の採用候補者・合格決定者 |
| ④ 生活福祉資金「就学支度費」 | 世帯(連帯借受人) | 50万円 | なし | 社会福祉協議会の審査による | 住民税非課税程度の低所得世帯 |
(出典:JASSO 2027年度 貸与奨学金案内 p.11・24・25/日本政策金融公庫 国の教育ローン ご利用条件。国の教育ローンの金利は令和8年7月1日現在)
それぞれの中身を順番に見ていきます。
方法1:学校に入学金の延納・分納を相談する
最初にやるべきは、進学先の学校に「奨学金の振込が入学後になるので、入学金の納付を待ってもらえないか・分けられないか」と相談することです。お金を借りずに済む可能性があり、利子もかかりません。
国も学校に配慮を求めています。文部科学省の「授業料等減免事務処理要領」では、入学料などの初年度納付金の納付が困難な学生について、納付時期の猶予、分納、免除、減免など弾力的な取扱いや柔軟な配慮を行うことを学校に求めています(出典:文部科学省 高等教育の修学支援新制度 授業料等減免事務処理要領)。
ただし、延納・分納の制度があるか、どこまで待ってもらえるかは学校ごとに異なります。相談するときは次の3点を伝えるとスムーズです。
- JASSOの奨学金の採用候補者であること(採用候補者決定通知を手元に)
- 初回振込の見込み時期(4月21日など)
- いつまでに・いくらなら払えるかという具体的な計画
また、進学先が学費保証サービスを導入している場合は、学費を学校指定の回数に分けて納められることがあります。全保連の「Z-College support」は、入学(進級)までに一括払いすることが多い学費を、学校が指定した分納回数で支払えるようにするサービスです(出典:全保連 学費保証 Z-College support 学生様へ)。利用できるのは導入している学校に限られるので、募集要項や学校の案内で確認してください。仕組みは学費保証とは?で解説しています。
分納の頼み方や理由の書き方は、専門学校の学費が払えない・間に合わないときの対処法で例文つきで紹介しています。
方法2:国の教育ローン(日本政策金融公庫)を申し込む
保護者が借りる公的な教育ローンです。入学金・授業料だけでなく受験費用や住まいの費用にも使え、入学前に借りられるのが最大の特徴です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申込者 | 保護者 |
| 融資限度額 | 学生1人につき350万円(自宅外通学、修業年限5年以上の大学、大学院、海外留学は450万円) |
| 金利 | 年4.05%(固定金利・保証料別。令和8年7月1日現在) |
| 優遇金利 | ひとり親家庭、交通遺児家庭、世帯年収200万円(所得132万円)以内、子ども3人以上かつ世帯年収500万円以内の世帯などは上記から年0.4%引き下げ |
| 返済期間 | 20年以内 |
| 世帯年収の上限 | 子ども1人:790万円/2人:890万円/3人:990万円 |
| 対象校 | 修業年限3か月以上で中学卒業以上が対象の学校など(専門学校も対象) |
| 使いみち | 入学金・授業料・施設設備費、受験費用、住居費(敷金・家賃)、教科書・教材費、通学費、パソコン購入費など |
(出典:日本政策金融公庫 国の教育ローン ご利用条件や金利・ご返済方法/教育一般貸付)
申し込みのタイミング
JASSOの案内では、国の教育ローンの審査期間は10日前後、その後融資実行(口座への振込)までにさらに10日前後かかるとされています。公庫は必要な時期の2〜3か月前の申し込みを目安としています(出典:JASSO 2027年度 貸与奨学金案内 p.24)。
入学金の期限が合格発表から数週間しかない学校もあるため、合格発表前に申し込んでおくことも検討しましょう。国の教育ローンは1年中申し込めます。
審査に通らなかったら
国の教育ローンは審査があり、申込要件を満たしていても利用できないことがあります。その場合でも、JASSOの入学時特別増額貸与奨学金を利用できる道が開けます(次の方法3)。公庫から届く「融資できない旨が記載された通知文」は捨てずに保管してください。進学届を出すときにその日付を入力する必要があります(出典:JASSO 入学時特別増額貸与奨学金の利用条件)。
方法3:入学時特別増額貸与奨学金+ろうきんの「入学時必要資金融資」
入学時特別増額貸与奨学金とは
毎月の奨学金(第一種または第二種)に上乗せして、入学した月に1回だけ振り込まれる利子付きの奨学金です。
- 貸与額:10万円・20万円・30万円・40万円・50万円から選択
- 利子:あり
- 振込:毎月の奨学金の初回振込時に1回限り(つまり進学後)
- 単独では利用できない(第一種・第二種と一緒に申し込む)
利用できるのは、国の教育ローンを申し込んだが利用できなかった世帯、または奨学金の家計基準で使う「貸与額算定基準額」が75,000円以下の世帯(この場合は国の教育ローンの申込手続きを省略できる)です。国の教育ローンを借りられた場合は、入学時特別増額は辞退することになります(出典:JASSO 入学時特別増額貸与奨学金/利用条件/2027年度 貸与奨学金案内 p.24)。
ここで注意したいのは、入学時特別増額も振込は入学後だという点です。「入学時」という名前ですが、入学金の期限には間に合いません。そこで使うのが、ろうきんのつなぎ融資です。
ろうきんの「入学時必要資金融資」(つなぎ融資)
入学時特別増額貸与奨学金の採用候補者に限り、労働金庫(ろうきん)から入学前にお金を借り、入学後に振り込まれる入学時特別増額で一括返済できる制度です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申込者 | 採用候補者本人(合格が決定している人) |
| 対象となる費用 | 入学時に進学先へ払う入学金・授業料(すでに納めた分は対象外) |
| 融資限度額 | 申込時に選んだ入学時特別増額の額(10万〜50万円)まで。それを超えて借りることはできない |
| 融資方法 | 本人名義の労働金庫口座に入金後、労働金庫から進学先へ直接振込 |
| 返済 | 入学時特別増額の振込時に、奨学金振込口座から元金と利子を一括で引き落とし |
| 利率 | 年2.85%(固定。2025年6月1日現在の記載。金融情勢により変動) |
| 申込時期 | 採用候補者に決定した後。納付期限まで2週間程度の余裕をもって |
| 申込方法 | 労働金庫の店舗へ来店 |
(出典:JASSO 2027年度 貸与奨学金案内「労働金庫の入学時必要資金融資制度」 p.25)
申し込み前に押さえておきたい条件は次のとおりです。
- 奨学金の振込口座を労働金庫の口座にする必要がある。融資を申し込んだ後は、振込口座を他の銀行に変えられない
- 父母または親権者の住所か勤務先が、その労働金庫の取扱地域内にあること
- 採用候補者決定通知で「国の教育ローンの申込み:必要」とされた人は、ろうきんに申し込む前に国の教育ローンの手続きを済ませておく(利用できなかったことを示す必要があるため)
- 国内の学校に進学する人のみ(海外の学校は対象外)
(出典:同案内 p.25/労働金庫 入学時必要資金融資)
「ろうきんの審査に落ちた」ときは
JASSOの案内には「審査があるため、必ず利用できるというわけではありません」「合格決定から入学金の納付期限までの期間が短い等、この制度を利用できない場合があります」と書かれています。審査の基準は一次資料では公表されていません。
審査に通らなかった、あるいは期限に間に合わなかった場合は、方法1の学校への延納・分納の相談、住民税非課税程度の世帯であれば方法4の生活福祉資金を並行して検討してください。まず学校に「融資が間に合わなかった」と早めに伝えることが大切です。
方法4:生活福祉資金「就学支度費」(社会福祉協議会)
住民税非課税程度の低所得世帯が対象の、都道府県社会福祉協議会の貸付制度です。
- 就学支度費:50万円(無利子)
- 対象は入学時に必要な入学金など。受験料など受験にともなう費用は原則として対象外
- 保証人は不要(世帯内で連帯借受人が必要)
- 償還期限:据置期間(卒業後6か月以内)経過後20年以内
- 窓口:住んでいる地域の市区町村社会福祉協議会
(出典:JASSO 2027年度 貸与奨学金案内「進学前の資金の準備」 p.11)
無利子で借りられる一方、審査や面談に時間がかかることがあるため、対象になりそうな世帯は早めに社会福祉協議会へ相談してください。
修学支援新制度の対象者は入学金が安くなる?
住民税非課税世帯などが対象の「高等教育の修学支援新制度」では、給付型奨学金に加えて授業料と入学金の減免が受けられます。専門学校(昼間部)の減免上限額(住民税非課税世帯=第Ⅰ区分)は次のとおりです。
| 設置者 | 入学金 | 授業料(年額) |
|---|---|---|
| 国公立の専門学校 | 70,000円 | 166,800円 |
| 私立の専門学校 | 160,000円 | 590,000円 |
(出典:文部科学省 授業料等減免事務処理要領。住民税非課税に準ずる世帯は3分の2・3分の1などの割合で減免)
ただし、注意点が2つあります。
- 入学金の減免は、入学前または入学後速やかに申請して認定された人が対象です。入学年の途中から支援を受け始めた場合は、さかのぼって入学金を減免することはできません(同要領)
- 在学生の授業料は認定まで納付を猶予するのが原則とされていますが、入学者の入学金・授業料はこの原則の対象外とされ、学校ごとの配慮に委ねられています。いったん入学金を納め、後から減免分が還付される扱いになる学校もあります
採用候補者になったら、入学金を「払う必要があるのか」「後から戻るのか」を進学先に必ず確認してください。
状況別:どの方法を使えばいい?
| あなたの状況 | まず検討する方法 |
|---|---|
| 保護者が借入できる・世帯年収が上限内 | ②国の教育ローン(早めに申込) |
| 国の教育ローンに通らなかった/申し込めなかった | ③入学時特別増額+ろうきんのつなぎ融資 |
| 採用候補者決定通知で「国の教育ローンの申込み:不要」 | ③入学時特別増額+ろうきんのつなぎ融資 |
| 住民税非課税程度の世帯 | ④生活福祉資金+修学支援新制度の入学金減免の確認 |
| 必要額が50万円を超える/期限が近すぎる | ①学校に延納・分納を相談(学費保証の有無も確認) |
| どれにも当てはまらない・どれも間に合わない | ①学校に延納・分納を相談 |
どのケースでも、①学校への相談は並行して進めるのが安全です。借入の審査結果を待つ間に期限が過ぎてしまうのが、いちばん避けたい事態です。
奨学金そのものの採用が不安な人は奨学金に落ちる確率は?、保護者に頼らず学費を工面したい人は専門学校の学費を自分で払うことはできる?もあわせてご覧ください。
よくある質問
Q. 入学時特別増額貸与奨学金だけを借りることはできますか?A. できません。第一種または第二種の奨学金と一緒に利用する制度です。給付奨学金だけとの組み合わせも不可です(出典:JASSO 2027年度 貸与奨学金案内)。
Q. 国の教育ローンと入学時特別増額の両方を借りられますか?A. 併願はできますが、国の教育ローンが利用できた場合は入学時特別増額を辞退することになります。進学届で辞退の手続きをします(出典:同案内 p.24)。
Q. 奨学金の振込口座をネット銀行にしてもいいですか?A. JASSOの奨学金の振込口座には、楽天銀行・住信SBIネット銀行などのインターネット専業銀行は使えません。ろうきんのつなぎ融資を使う場合は、労働金庫の口座にする必要があります(出典:同案内 p.12・25)。
Q. 入学時特別増額にも機関保証の保証料はかかりますか?A. かかります。機関保証を選んだ場合、入学時特別増額分の保証料は、振り込まれるときに1回払いで差し引かれます(出典:JASSO 2026年度 保証料月額(目安)専修学校)。保証の選び方は奨学金の機関保証と人的保証はどっちがいい?をご覧ください。
Q. 国の教育ローンはいつまでに申し込めばいいですか?A. JASSOは、入学時特別増額を希望する採用候補者に「可能な限り3月中に国の教育ローンの申込手続きを終えてください」と呼びかけています。手続きに1か月ほどかかる可能性があるためです(出典:JASSO【採用候補者】入学時特別増額貸与奨学金を希望する方について)。入学金の期限がそれより早い場合は、さらに前倒しで動きましょう。
まとめ
- JASSOの奨学金は進学後にしか振り込まれない(最短で4月21日)。入学金や前期分の学費には間に合わない
- 入学前のお金は、①学校に延納・分納を相談 ②国の教育ローン ③入学時特別増額+ろうきんのつなぎ融資 ④生活福祉資金の就学支度費で用意する
- 国の教育ローンは審査10日前後+融資まで10日前後。入学時特別増額は国の教育ローンを利用できなかった世帯などが対象で、ろうきんのつなぎ融資は最大50万円
- 修学支援新制度の入学金減免は、入学前に払う必要があるか・後から戻るかを学校に確認する
- どの方法も審査と時間がかかる。合格したら期限から逆算して、学校への相談と借入の申込を同時に進める
入学金の期限は、多くの人が思っているより早くやってきます。採用候補者決定通知を受け取った時点で、進学先の納付期限と振込時期のすき間をどう埋めるか、家族と一緒に計画を立てておきましょう。
※本メディア「スクモア」は、機関保証・家賃保証・学費保証事業を行う全保連株式会社が運営しています。

