人的保証とは、「人」に保証人になってもらうことで契約を成立させる仕組みのことです。保証会社などの法人にお金を払って保証してもらう「機関保証」と対になる言葉として使われます。
専門学生・大学生が人的保証という言葉に出会う場面は、主に2つあります。奨学金を借りるときと、一人暮らしの部屋を借りるときです。この記事では、それぞれの仕組みと、機関保証・家賃保証会社との違いをまとめて解説します。
人的保証とは:人に保証してもらう仕組み
人的保証は、契約者本人が支払えなくなったときに、代わりに支払う人(保証人)を立てる方法です。
| 人的保証 | 機関保証 | |
|---|---|---|
| 保証するのは | 親族などの個人 | 保証機関・保証会社などの法人 |
| 費用 | かからない | 保証料がかかる |
| 手間 | 保証人を探す・書類と押印が必要 | 申し込み手続きのみ |
| 立てられないと | 契約できない | — |
一見すると「費用がかからない人的保証のほうが得」に見えます。ただし人的保証は、引き受けてくれる人を探す負担と、その人に長期間の責任を負わせる重さがセットになっています。この点を含めて比較するのが大切です。
人的保証が使われる2つの場面
場面1:奨学金を借りるとき
日本学生支援機構(JASSO)の貸与奨学金を申し込むときは、人的保証か機関保証かを選びます。人的保証を選ぶと、連帯保証人と保証人の2人を立てる必要があります。
場面2:賃貸物件を借りるとき
アパートやマンションを借りるときの「連帯保証人を立ててください」も人的保証です。近年は保証人ではなく家賃保証会社の利用を必須にする物件が増えています。
同じ「人的保証」でも、必要な人数も条件も異なります。順に見ていきましょう。
【奨学金】人的保証の仕組みと条件
連帯保証人と保証人、2人が必要
JASSOの人的保証では、次の2人を立てます。どちらか1人だけでは申し込めません。
- 連帯保証人:原則として父母。本人と同じ責任を負う
- 保証人:父母を除く4親等以内の親族(おじ・おば・兄弟姉妹など)
責任の重さは連帯保証人のほうが上です。連帯保証人には「まず本人に請求してください」と主張する権利(催告の抗弁権)がなく、請求されたら全額を支払う義務があります。詳しくは奨学金の連帯保証人とは?で解説しています。
それぞれの選任条件(2026年度)
連帯保証人の条件
- 本人が未成年者の場合はその親権者、成年者の場合は父母または4親等以内の親族
- 未成年者および学生でないこと
- 本人の配偶者(婚約者を含む)でないこと
- 債務整理中(破産等)でないこと
- 貸与終了時に本人が45歳を超える場合は、その時点で60歳未満であること
保証人の条件
- 本人および連帯保証人と別生計であること
- 父母を除く、おじ・おば・兄弟姉妹等の4親等以内の親族であること
- 返還誓約書の誓約日時点で65歳未満であること
- 未成年者および学生でないこと
- 本人または連帯保証人の配偶者(婚約者を含む)でないこと
- 債務整理中(破産等)でないこと
条件を満たさない人に依頼する場合は、「返還保証書」の提出と、年間収入320万円以上(給与所得者)などの収入・資産要件が加わります。
(出典:JASSO 第一種奨学金の人的保証制度)
誰がなれて誰がなれないのかは奨学金の保証人の条件でなれない人はいる?に一覧があります。
奨学金で人的保証を選ぶメリット・デメリット
メリット
- 保証料がかからない。貸与額がそのまま満額受け取れる
デメリット
- 条件を満たす親族2人を探す必要がある
- 2人に書類の記入・押印・印鑑登録証明書などの手間をかける
- 返還が滞ったとき、親族に請求が及ぶ
- 後から機関保証へ変更するには、やむを得ない事由が必要
【賃貸】人的保証と家賃保証会社
部屋を借りるときの人的保証は、連帯保証人を1人立てるのが一般的です。親が引き受けるケースがほとんどですが、近年は事情が変わってきています。
2020年の民法改正で「極度額」の明記が必須に
2020年4月1日に施行された改正民法により、個人が保証人になる根保証契約では「極度額(保証する上限金額)」を定めなければ、その保証契約は無効となりました(民法465条の2)。
賃貸借契約の連帯保証人もこれに該当します。つまり契約書に「極度額 ○○円」と具体的な金額を明記する必要があります。
(出典:法務省「保証に関する民法のルールが大きく変わります」)
この改正によって、貸主側は「上限いくらまで保証してもらえるか」を契約時に決めなければならなくなりました。保証人を頼まれる側にとっては責任の上限がはっきりするという保護になった一方、貸主側の実務負担は増えています。
家賃保証会社が主流になった理由
現在の賃貸市場では、家賃保証会社の利用を条件とする物件が多数を占めるようになりました。背景にはいくつかの事情があります。
- 高齢化などにより、連帯保証人を立てられない入居希望者が増えた
- 個人の連帯保証人では、実際に回収できるかどうかが不確実
- 極度額の設定など、人的保証の手続きが煩雑になった
学生にとっては、親に連帯保証人を頼まなくても部屋を借りられるという利点があります。一方で、家賃の0.5〜1か月分程度の初回保証料と、年1回程度の更新料がかかるのが一般的です(金額は保証会社・物件により異なります)。
なお、「保証会社を使うなら連帯保証人は不要」とは限りません。 物件によっては保証会社と連帯保証人の両方を求められることもあるため、契約前に確認しましょう。
人的保証と機関保証、どちらを選ぶ?
奨学金に話を戻して、判断の目安を整理します。
機関保証の保証料はいくらか(2026年度採用者)
第一種奨学金(無利息)
| 区分 | 貸与月額 | 貸与月数 | 保証料月額 |
|---|---|---|---|
| 国・公立/自宅 | 30,000円 | 24 | 703円 |
| 国・公立/自宅外 | 40,000円 | 24 | 1,032円 |
| 私立/自宅 | 40,000円 | 24 | 1,032円 |
| 私立/自宅外 | 50,000円 | 24 | 1,517円 |
第二種奨学金(利息付き・貸与月数24の場合)
| 貸与月額 | 保証料月額 |
|---|---|
| 30,000円 | 856円 |
| 50,000円 | 1,865円 |
| 80,000円 | 3,212円 |
| 100,000円 | 4,574円 |
| 120,000円 | 5,817円 |
(出典:JASSO 機関保証制度リーフレット 2026.04)
保証料を支払うのは貸与期間中のみで、返還期間中は不要です。 また、繰上返還などで保証期間が短くなった場合は保証料の一部が返戻されることがあります(詳しくはこちら)。
保証料が高いと感じるかどうかは、奨学金の機関保証は保証料が高い?でも掘り下げています。
判断の目安
人的保証が向いているケース
- 父母が連帯保証人を引き受けられ、4親等以内の親族にも保証人を頼める
- 家族間で返還額と返還期間について合意ができている
- 貸与額を1円も減らしたくない
機関保証が向いているケース
- 頼める親族がいない、または頼むことに抵抗がある
- 親族に長期の責任を負わせたくない
- 手続きを簡潔に済ませたい
- 所得連動返還方式を利用したい(この場合は機関保証が必須)
機関保証の申し込み手続きや、延滞した場合の流れを含めた全体像は奨学金の保証人が不要な機関保証とは?で解説しています。
頼める人がいるかどうかで迷ったら
「親族はいるけれど、年齢や続柄の条件を満たすか分からない」という段階なら、まず条件を確認してみてください。
- 祖父母に頼めるか迷っている → 65歳以上の祖父母は奨学金の保証人対象?
- 頼める人が見つからない → 奨学金の保証人を依頼できる人がいない!対処法はある?
- 頼まれた側のリスクを知りたい → 奨学金の保証人になるリスクは?
変更はできる?
- 人的保証 → 機関保証:連帯保証人・保証人の死亡や行方不明、債務整理などやむを得ない理由がある場合、または所得連動返還方式へ変更する場合に可能。ただし貸与の始めまでさかのぼって保証料を一括で支払う必要があります
- 機関保証 → 人的保証:できません
後戻りできない選択なので、申し込み時によく検討してください。
よくある質問
Q. 人的保証を選ぶと本当に費用はゼロですか?A. 保証料はかかりません。ただし印鑑登録証明書の取得費用など、書類にかかる実費は必要です。
Q. 保証人は本人と同居していてもいいですか?A. 保証人は本人および連帯保証人と別生計である必要があります。同一生計の家族は保証人になれません。
Q. 賃貸の連帯保証人と奨学金の連帯保証人は同じ人でも大丈夫?A. 制度上は問題ありません。ただしその人が負う責任は合算されます。金額と期間を必ず共有してください。
Q. 機関保証を選べば返さなくてよくなりますか?A. いいえ。保証料を払っていても、返還するのは本人です。延滞すると保証機関が代わりに返還(代位弁済)しますが、その後保証機関から本人へ一括で請求されます。
まとめ
- 人的保証は人に保証してもらう仕組み。法人が保証する機関保証と対になる
- 奨学金の人的保証では、連帯保証人と保証人の2人が必要。保証人は本人・連帯保証人と別生計の4親等以内の親族で65歳未満
- 賃貸の人的保証は、2020年の民法改正で極度額の明記が必須に。現在は家賃保証会社の利用が主流
- 機関保証の保証料は、専門学校・第一種で月703〜1,517円程度(2026年度)。支払うのは貸与期間中だけ
- 機関保証から人的保証への変更はできないため、申し込み時の判断が重要
保証は「誰かに責任を引き受けてもらう」という重い約束です。費用の有無だけでなく、誰にどれだけの責任が及ぶのかまで含めて、家族と話し合って決めてください。

