奨学金の申込書で必ず迷うのが「機関保証」と「人的保証」の選択です。最初に結論をお伝えします。
- 連帯保証人(原則父母)と保証人(おじ・おばなど別生計の親族)の2人を確実に頼めて、費用を1円でも抑えたいなら人的保証
- 頼める人がいない・頼みたくない・家族に責任を負わせたくないなら機関保証
- 迷っているなら機関保証。専門学校2年課程・第一種(月5万円)の保証料は月1,517円、2年間の合計で約3.6万円です(2026年度採用者)。この金額で「家族が返還責任を負う」リスクをなくせます
日本学生支援機構(JASSO)の「奨学金事業に関するデータ集(令和8年1月)」によると、令和6年度の採用者の56.09%が機関保証を選択しています。いまや機関保証が多数派です。
この記事では、JASSOの一次資料をもとに「頼める人がいるか」「費用差」「家族への負担」「後から変更できるか」の4つの判断基準で決め方を整理し、ケース別のおすすめを示します。
先に確認:機関保証と人的保証の違い
| 項目 | 機関保証 | 人的保証 |
|---|---|---|
| 誰が保証するか | 保証機関(公益財団法人 日本国際教育支援協会) | 連帯保証人と保証人の2人 |
| 費用 | 保証料が必要(毎月の貸与額から差し引き) | 不要 |
| 立てる人 | 不要(本人以外の連絡先の指定は必要) | 必須 |
| 延滞したとき | 保証機関がJASSOへ代位弁済→本人に原則一括で請求 | 本人→連帯保証人(全額)→保証人(2分の1)の順に請求 |
| 後からの変更 | 人的保証への変更は不可 | やむを得ない事由があれば機関保証へ変更可 |
(出典:JASSO 保証制度の選択/機関保証制度/人的保証制度)
なお、第一種奨学金で所得連動返還方式を選ぶ場合は、選べるのは機関保証だけです(出典:同「保証制度の選択」)。この場合は迷う余地がありません。
それぞれの仕組みは奨学金の保証人が不要な機関保証とは?と人的保証とは?で詳しく解説しています。
判断基準1:連帯保証人と保証人を「2人とも」頼めるか
人的保証は、連帯保証人と保証人の両方が揃わないと申し込めません。まずここで決まります。
連帯保証人になれる人
- 本人が未成年なら親権者、成年なら父母(父母がいない場合は4親等以内の親族)
- 未成年者・学生でない、本人の配偶者(婚約者を含む)でない、債務整理中でない
- 貸与終了時に本人が45歳を超える場合は、その時点で60歳未満
保証人になれる人
- 本人および連帯保証人と別生計で、父母を除く4親等以内の親族(おじ・おば・祖父母・兄弟姉妹など)
- 返還誓約書提出時点で65歳未満
- 未成年者・学生でない、本人または連帯保証人の配偶者でない、債務整理中でない
(出典:JASSO 人的保証制度)
4親等以内の親族以外や65歳以上の人に頼む場合は、年間収入320万円以上などの収入・資産要件が加わります。「祖父母は65歳を超えている」「親戚づきあいがない」「父母が債務整理中」といった事情があると、そもそも人的保証は成立しません。この時点で機関保証が答えです。
なれる人・なれない人の詳しい判定は奨学金の保証人の条件でなれない人はいる?、頼める相手が見つからないときは奨学金の保証人を依頼できる人がいない!をご覧ください。
判断基準2:費用差はいくらか——2026年度の保証料月額
人的保証は無料、機関保証は保証料がかかります。差額を具体的に見てみましょう。保証料は毎月の奨学金から差し引かれるため、手元から別途支払う必要はなく、支払うのは貸与期間中だけです。
第一種奨学金(無利息)・専門学校の場合
| 課程 | 区分 | 貸与月額 | 保証料月額 | 貸与期間の合計 |
|---|---|---|---|---|
| 2年課程 | 全区分共通 | 20,000円 | 469円 | 11,256円 |
| 2年課程 | 全区分共通 | 30,000円 | 703円 | 16,872円 |
| 2年課程 | 国公立・私立共通 | 40,000円 | 1,032円 | 24,768円 |
| 2年課程 | 私立・自宅外 | 50,000円 | 1,517円 | 36,408円 |
| 2年課程 | 私立・自宅外(最高月額) | 60,000円 | 1,952円 | 46,848円 |
| 3年課程 | 全区分共通 | 30,000円 | 896円 | 32,256円 |
| 3年課程 | 国公立・私立共通 | 40,000円 | 1,282円 | 46,152円 |
| 3年課程 | 私立・自宅外 | 50,000円 | 1,602円 | 57,672円 |
(出典:JASSO 2026年度 保証料月額(目安)第一種奨学金 専修学校(専門課程)。合計は保証料月額×貸与月数で本記事が計算)
第二種奨学金(利息付き)の場合
| 貸与月額 | 貸与24か月(2年課程) | 貸与36か月(3年課程) |
|---|---|---|
| 30,000円 | 856円 | 1,102円 |
| 50,000円 | 1,865円 | 1,977円 |
| 80,000円 | 3,212円 | 3,820円 |
| 100,000円 | 4,574円 | 5,820円 |
| 120,000円 | 5,817円 | — |
(出典:JASSO 2026年度 保証料月額(目安)第二種奨学金 大学院以外)
たとえば第二種で月8万円を3年間借りると、保証料は月3,820円、合計137,520円です。貸与総額288万円に対して約4.8%にあたります。借りる額が大きいほど保証料も増えるため、第二種で高額を借りる人ほど「人的保証で節約」のメリットは大きくなります。
一方、第一種を月5万円・2年間なら合計36,408円。「家族に連帯保証をお願いする」ことと比べてどちらが重いかは、家庭によって答えが変わります。
正確な金額は採用時の奨学生証で通知されます。事前に知りたい場合はJASSOの「奨学金貸与・返還シミュレーション」で試算できます。保証料が高いかどうかの検証は奨学金の機関保証は保証料が高い?でも詳しく扱っています。
判断基準3:家族が負う責任の重さ
人的保証は「無料」ですが、対価として家族が法的な責任を負います。
- 連帯保証人:本人が延滞すると返還未済額の全額を返還する義務。本人に財産があっても「先に本人へ請求して」とは言えない
- 保証人:返還未済額の2分の1を返還する義務。催告・検索の抗弁権はある
(出典:JASSO 人的保証制度)
延滞情報は個人信用情報機関に登録され、クレジットカードやローンの契約に影響が出る可能性があります。保証の範囲は元金・利息・延滞金、期間は貸与中から返還完了までなので、卒業後10年以上にわたって家族に責任が続きます。
「親なら当然」と思われがちですが、父母が住宅ローンを組む予定がある、兄弟の進学が控えている、祖父母が年金生活といった場合、保証を引き受けること自体が家計のリスクになります。連帯保証人を頼まれた側の視点は奨学金の連帯保証人とは?、リスクの整理は奨学金の保証人になるリスクは?をご覧ください。
判断基準4:後から変更できるか——一方通行の関係に注意
ここが最も見落とされるポイントです。2つの保証制度は対称ではありません。
人的保証→機関保証:条件付きで可能
次のいずれかに該当する場合、在学中は学校を通じて機関保証へ変更できます。
- 連帯保証人または保証人が死亡・行方不明・意識不明・債務整理(破産等)などで保証を続けられなくなった
- 平成29年度以降採用者で、第一種奨学金の返還方式を定額返還方式から所得連動返還方式に変更する
ただし、貸与の始めまでさかのぼって保証料を一括で支払う必要があります(出典:JASSO 人的保証から機関保証への変更(在学中))。返還中の変更は、延滞していない・リレー口座で返還している・本人が債務整理中でないことが条件です(出典:日本国際教育支援協会 人的保証から機関保証への変更について)。
つまり「保証人に頼み続けるのが気まずくなったから機関保証にしたい」という理由だけでは変更できません。
機関保証→人的保証:不可
JASSOのFAQには「機関保証から人的保証への変更はできません」と明記されています(出典:JASSO FAQ)。「保証料がもったいないから途中で保証人を立てる」はできない、ということです。
変更できるのは「進学届を出すまで」
予約採用で選んだ保証制度は、進学届の提出時までなら変更できます。進学届提出後は機関保証から人的保証へ戻せません(出典:JASSO FAQ 進学届提出時の保証制度変更)。高校3年の秋に申し込んで進学まで半年ある人は、この間に家族と話し合って最終決定しましょう。
ケース別:あなたはどっち?
| あなたの状況 | おすすめ | 理由 |
|---|---|---|
| 父母・親族に頼める人がいて、全員が納得している | 人的保証 | 保証料ゼロ。家族の合意があれば最も安い |
| 頼める人が1人しかいない(連帯保証人だけ/保証人だけ) | 機関保証 | 人的保証は2人揃わないと成立しない |
| 祖父母が65歳以上、親族が遠い | 機関保証 | 保証人の年齢・続柄要件を満たしにくい |
| 父母に負担をかけたくない・家庭の事情を話したくない | 機関保証 | 自分の責任だけで申し込める |
| 所得連動返還方式を使いたい(第一種) | 機関保証 | 制度上、機関保証のみ |
| 第二種で月10万円以上を長期間借りる | 人的保証を検討 | 保証料が月4,500円超になり、負担感が大きい |
| 決めきれない | 機関保証 | 人的→機関はやむを得ない事由が要るが、進学届提出前なら変更可。半年後に人的へ切り替える余地を残せる |
「決めきれないなら機関保証」としているのは、予約採用から進学届提出までは変更できるためです。逆に、人的保証で進学届を出したあとに「やはり保証人を頼めなくなった」となると、死亡・債務整理などの事由がない限り切り替えられず、保証料を一括でさかのぼって支払うことになります。
機関保証を選ぶ前に知っておきたい3つの注意点
1. 保証料を払っても返還義務はなくならない
機関保証は「返さなくてよくなる保険」ではありません。延滞すると保証機関がJASSOへ代位弁済したうえで、本人に対して原則一括で代位弁済額を請求し、滞納すると年10%の遅延損害金が加算されます(出典:JASSO 機関保証制度)。
2. 保証料は繰上返還すると一部戻る
全額繰上返還や一部繰上返還で返還期間が短くなった場合、支払った保証料の一部が返戻されます(出典:同ページ)。「払い損」になるとは限りません。詳しくは奨学金の機関保証で保証料は返ってくる?で解説しています。
3. 保証機関は申し込みを断らない
JASSOの機関保証制度リーフレット(2026.04)には「奨学金の申し込みと同時に機関保証を希望する人を断ることはありません」と記載されています(出典:JASSO 機関保証制度リーフレット)。審査で落ちる心配は不要です。
よくある質問
Q. 機関保証と人的保証を両方選ぶことはできますか?A. 国内の奨学金ではどちらか一方を選びます。両方の加入が必要なのは、海外留学奨学金の第一種(海外大学院学位取得型対象)・第二種(海外)の場合だけです(出典:JASSO 保証制度の選択)。
Q. 人的保証で申し込んだあと、保証人が高齢になったら機関保証にできますか?A. 年齢を理由にした変更は認められていません。死亡・行方不明・意識不明・債務整理などやむを得ない事由が必要です。申し込み時点で「返還が終わるまで」を見据えて選んでください。
Q. 保証料は入学時特別増額貸与奨学金にもかかりますか?A. かかります。入学時特別増額分の保証料は、その奨学金が振り込まれるときに1回払いで差し引かれます(出典:JASSO 2026年度 保証料月額(目安)専修学校)。
Q. 機関保証を選んだら、親には何も連絡がいきませんか?A. 保証人としての責任は発生しませんが、申込時に「本人以外の連絡先」の指定は必要です。延滞時にはこの連絡先に連絡がいく可能性があります。
まとめ
- 決め方は「2人とも頼めるか」→「費用差」→「家族の負担」→「後から変更できるか」の順で考える
- 人的保証は保証料ゼロだが、連帯保証人は全額・保証人は2分の1の返還義務を負い、卒業後も責任が続く
- 機関保証の保証料は、専門学校2年課程・第一種月5万円で月1,517円・合計約3.6万円(2026年度)。令和6年度採用者の56.09%が機関保証を選択
- 機関保証→人的保証は不可、人的→機関はやむを得ない事由がある場合のみ(保証料をさかのぼって一括払い)。変更の猶予は進学届提出まで
- 迷ったら機関保証。家族に頼めて全員が納得しているなら人的保証
どちらを選んでも、奨学金を返すのは本人です。金額と期間を数字で確認したうえで、家族と一度きちんと話し合って決めてください。
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