奨学金を人的保証で申し込むとき、「この人は保証人になれるのか」で迷う場面は多いものです。無職の親、年金暮らしの祖父母、同居している兄、別居しているおじ——それぞれ答えが違います。
この記事では、日本学生支援機構(JASSO)が2026年度の奨学生向けに示している連帯保証人・保証人の選任条件を一覧にしたうえで、年収・年齢・続柄・生計の4つの観点から「なれる人・なれない人」を判定できるようにしました。よくあるケース別の可否と、必要書類もまとめています。
なお、条件を満たす人がいないときの対処法は奨学金の保証人がいない・頼めないときの対処法、65歳以上の祖父母に頼めるかは65歳以上の祖父母は保証人になれる?で詳しく扱っています。本記事は「誰がなれるか」の判定に絞ります。
結論:連帯保証人と保証人の条件一覧(2026年度)
JASSOの人的保証では、連帯保証人1人と保証人1人を立てます。条件は次のとおりです(出典:JASSO 第一種奨学金の人的保証制度/返還誓約書の記入について)。
| 観点 | 連帯保証人 | 保証人 |
|---|---|---|
| 続柄 | 本人が未成年なら親権者(いなければ未成年後見人)。成年なら父母。父母がいない等の場合は兄弟姉妹・おじ・おば等の4親等以内の親族 | 父母を除く4親等以内の親族(おじ・おば・兄弟姉妹・祖父母など) |
| 生計 | 条件なし | 本人および連帯保証人と別生計 |
| 年齢 | 未成年者でないこと | 未成年者でないこと。誓約日(申込日)時点で65歳未満(提出後に変更する場合は届出日現在で65歳未満) |
| 本人の年齢による条件 | 貸与終了時に本人が満45歳を超える場合、その時点で60歳未満 | 同左 |
| 学生 | 学生でないこと | 学生でないこと |
| 配偶者 | 本人の配偶者(婚約者含む)でないこと | 本人または連帯保証人の配偶者(婚約者含む)でないこと |
| 債務整理 | 債務整理中(破産等)でないこと | 同左 |
| 収入 | 収入額の基準なし(ただし「収入に関する証明書類」の提出が必要) | 収入額の基準なし |
続柄・年齢の条件を満たさない人(4親等以内の親族でない人、65歳以上の保証人)を選ぶ場合は、「返還保証書」と収入・資産の証明書を添えて、一定の資力基準を満たすことを示せば選任できます。この基準は後述の「年収の条件」で説明します。
人的保証は奨学金だけでなく、賃貸物件を借りるときにも使われる仕組みです。制度そのものの成り立ちや機関保証との違いは人的保証とは?奨学金と賃貸それぞれの仕組み・機関保証との違いを解説で詳しく解説しています。
前提:連帯保証人と保証人は責任が違う
条件を見る前に、2人の役割の違いを押さえておきましょう。
- 連帯保証人:本人と連帯して返還の責任を負う人。本人が延滞すると、まず連帯保証人に請求され、返還未済額の全額を負担します
- 保証人:本人と連帯保証人が返還できなくなったときに代わって返還する人。保証人には「分別の利益」があり、負担は返還未済額の2分の1です。2022年5月の札幌高等裁判所判決を受けて、JASSOは保証人に対して2分の1の額を請求する取り扱いに改めています(出典:JASSO 札幌高等裁判所判決を踏まえた今後の保証人への対応について)
責任が重い連帯保証人には「父母」という続柄の縛りがあり、保証人には「別生計」「65歳未満」という縛りがある、と理解すると条件の違いが整理しやすくなります。連帯保証人そのものの詳しい解説は奨学金の連帯保証人とは?、引き受けた側が負うリスクは保証人になるリスクをご覧ください。
年収の条件はある?
「保証人になるには年収いくら必要?」という疑問への答えは、「4親等以内の親族であれば、年収の基準はない」です。JASSOの選任条件に収入額の下限はなく、収入が少ない親族でも条件上は選任できます。
ただし、連帯保証人については採用後に「収入に関する証明書類」(源泉徴収票、市区町村発行の所得証明書など)の提出が必要です。基準額はありませんが、書類は出す必要がある点は覚えておいてください。
年収・資産の基準が適用されるのは「例外の人」を選ぶとき
収入・資産の基準が登場するのは、次の人を選ぶ場合です。
- 連帯保証人・保証人に、4親等以内の親族でない人を選ぶとき
- 保証人に、65歳以上の人を選ぶとき
この場合は「返還を確実に保証できる人」であることを、返還保証書と証明書で示す必要があります。基準は次のとおりです(出典:JASSO 返還誓約書の記入について)。
| 基準 | 内容 | 証明書類 |
|---|---|---|
| 基準1(収入) | 給与所得者:年間収入320万円以上/給与所得者以外:年間所得220万円以上(年金収入は給与所得として扱う) | 直近の源泉徴収票、所得証明書、確定申告書の控え |
| 基準2(預貯金) | 預貯金額が貸与予定総額以上(保証人は貸与予定総額の2分の1以上) | 金融機関発行の預貯金残高証明書、取引残高報告書 |
| 基準3(固定資産) | 固定資産の評価額が貸与予定総額以上(保証人は2分の1以上) | 市区町村発行の固定資産評価証明書(+登記事項証明書) |
基準は組み合わせることもできます。たとえば基準1と2の組み合わせなら「年間収入+(預金残高÷16年)が320万円以上(所得の場合は220万円)」で判定します。16年は全返還者の平均返還予定年数です。返還保証書の書き方と添付書類は返還保証書とは?添付書類も紹介で解説しています。
年齢の条件はある?
年齢の条件は、連帯保証人と保証人で異なります。
| 連帯保証人 | 保証人 | |
|---|---|---|
| 下限 | 未成年者は不可 | 未成年者は不可 |
| 上限 | なし(父母・4親等以内の親族であれば年齢の上限はない) | 誓約日時点で65歳未満。65歳以上は返還保証書+資力基準を満たせば可 |
| 本人が高齢の場合 | 貸与終了時に本人が満45歳を超えるなら、その時点で60歳未満 | 同左 |
ポイントは、連帯保証人には65歳の上限がないことです。65歳以上の親が連帯保証人になることは、条件上は妨げられません。一方、保証人は65歳未満が原則です。「祖父母に頼みたいが70歳」というケースの扱いは、65歳以上の祖父母は奨学金の保証人になれる?年齢制限と必要書類で詳しく整理しています。
また、あまり知られていないのが「本人の年齢」による条件です。社会人が入学して奨学金を借り、貸与終了時に45歳を超える場合は、連帯保証人・保証人ともにその時点で60歳未満である必要があります。
続柄・生計の条件:4親等以内とは誰まで?
4親等以内の親族の範囲
親等は、本人から見て親子関係を1つ経るごとに1親等ずつ数えます(民法第726条)。奨学金の保証人に関係する主な続柄は次のとおりです。
| 親等 | 続柄 |
|---|---|
| 1親等 | 父母、子 |
| 2親等 | 祖父母、兄弟姉妹、孫 |
| 3親等 | 曽祖父母、おじ・おば、甥・姪 |
| 4親等 | いとこ、祖父母の兄弟姉妹(大おじ・大おば)、兄弟姉妹の孫 |
配偶者の血族(義理の父母・義理の兄弟姉妹など)も親族に含まれ、親等は配偶者を基準に数えます。ただし奨学金では本人の配偶者そのものは不可なので、該当するのは主に本人が既婚の場合の義父母などです。判断に迷う続柄は学校の奨学金窓口で確認してください。
「別生計」の条件は保証人だけ
保証人には「本人および連帯保証人と別生計であること」という条件があります。父(連帯保証人)と同居して家計をともにしている兄を保証人にすることはできません。連帯保証人にはこの条件がないため、父母は同居のままで問題ありません。
配偶者に関する条件
- 本人の配偶者(婚約者を含む)は、連帯保証人にも保証人にもなれません
- 連帯保証人の配偶者も保証人になれません。つまり「父を連帯保証人、母を保証人」という組み合わせは不可です
「両親2人で保証人をそろえる」ことはできない点は、最初につまずきやすいところです。
奨学金の保証人になれない人まとめ
ここまでの条件を裏返すと、なれない人は次のように整理できます。
| なれない人 | 連帯保証人 | 保証人 |
|---|---|---|
| 未成年者 | × | × |
| 学生 | × | × |
| 本人の配偶者・婚約者 | × | × |
| 連帯保証人の配偶者・婚約者 | ー | × |
| 債務整理中(破産等)の人 | × | × |
| 本人・連帯保証人と同一生計の人 | (条件なし) | × |
| 65歳以上の人(返還保証書なし) | (条件なし) | × |
| 4親等より遠い親族・親族以外(返還保証書なし) | × | × |
| 貸与終了時に本人が45歳超で、その時点で60歳以上の人 | × | × |
「×」でも、4親等以内でない人や65歳以上の保証人は、返還保証書と資力の証明を出せれば選任できます。逆に、未成年・学生・配偶者・債務整理中の人は、書類を出しても選任できません。
ケース別判定:この人は保証人になれる?
実際によくある相談を、条件に照らして判定します。
| ケース | 判定 | 理由・注意点 |
|---|---|---|
| 無職の父母を連帯保証人にしたい | 可 | 連帯保証人に収入額の基準はない。ただし収入に関する証明書類(所得証明書等)の提出は必要。債務整理中は不可 |
| 65歳未満で年金受給中の祖父母を保証人に | 可 | 祖父母は2親等。本人・連帯保証人と別生計であればよく、収入基準はない |
| 65歳以上の祖父母を保証人に | 条件付きで可 | 返還保証書と資力の証明が必要。年金収入は給与として扱われ、年間320万円以上か、預貯金が貸与予定総額の2分の1以上など。詳細はこちら |
| 祖父母を連帯保証人に | 父母がいない等の場合に可 | 連帯保証人は原則父母。父母がいない等の事情があれば、4親等以内の親族として祖父母も候補になる。年齢上限はない |
| 同居して家計をともにする兄・姉を保証人に | 不可 | 保証人は本人・連帯保証人と別生計が条件 |
| 別居して働いている兄・姉を保証人に | 可 | 2親等・別生計で条件を満たす。学生の場合は不可 |
| 別居のおじ・おばを保証人に | 可 | 3親等。65歳未満・別生計であればよい。「別居の親族」は保証人の最も一般的な候補 |
| いとこを保証人に | 可 | 4親等。別生計・65歳未満などの条件を満たせばよい |
| 父を連帯保証人、母を保証人に | 不可 | 保証人は連帯保証人の配偶者であってはならない |
| 本人の配偶者を連帯保証人に | 不可 | 本人の配偶者(婚約者含む)は選任不可 |
| 離婚して親権を持たない親を、未成年の本人の連帯保証人に | 不可 | 本人が未成年の場合、連帯保証人は親権者であることが条件 |
| 親族以外の恩師・知人を保証人に | 条件付きで可 | 返還保証書と資力の証明が必要。現実的には機関保証を検討するほうが相手の負担が少ない |
| 破産手続き中の親を連帯保証人に | 不可 | 債務整理中(破産等)の人は選任不可 |
判定に迷ったら、「続柄(4親等以内か)→生計(保証人は別生計か)→年齢(保証人は65歳未満か)→配偶者・学生・債務整理に該当しないか」の順で確認すると整理できます。
保証人の選任で必要な書類
人的保証を選んだ場合、採用後に提出する返還誓約書には次の書類を添付します(出典:JASSO 返還誓約書の記入について)。
| 書類 | 誰の | 備考 |
|---|---|---|
| 印鑑登録証明書(コピー不可) | 連帯保証人 | 返還誓約書の押印は実印 |
| 収入に関する証明書類(コピー可) | 連帯保証人 | 源泉徴収票、市区町村発行の所得証明書など |
| 印鑑登録証明書(コピー不可) | 保証人 | 返還誓約書の押印は実印 |
| 住民票(マイナンバーの記載がないもの) | 本人 | 申込時にマイナンバー未提出の本人のみ |
| 返還保証書+資産等に関する証明書(コピー可) | 該当する連帯保証人・保証人 | 4親等以内の親族でない人、65歳以上の保証人を選ぶ場合のみ |
保証人には収入証明が不要で、連帯保証人には必要、という違いがあります。採用後に連帯保証人・保証人を変更する場合も、新しい連帯保証人は印鑑登録証明書+収入証明、新しい保証人は印鑑登録証明書が必要です(出典:JASSO 連帯保証人等の変更(在学中))。
条件を満たす人がいない場合
連帯保証人・保証人の2人がそろわない場合は、保証機関が連帯保証する機関保証を選べば、保証人を立てずに奨学金を借りられます。申込時に選ぶほか、予約採用で人的保証を選んでいても進学届の提出時に変更できます。保証料は毎月の貸与額から差し引かれ、2026年度の目安は機関保証の保証料は高い?にまとめています。
申込前後の具体的な手順、採用後に切り替えられる条件、給付型奨学金や教育ローンなどの代替策は奨学金の保証人がいない・頼めないときの対処法で解説しています。人的保証と機関保証のどちらを選ぶべきか迷っている段階なら、機関保証と人的保証はどっちがいい?が判断の助けになります。
よくある質問
Q. 保証人に年収の条件はありますか?A. 4親等以内の親族であれば年収の基準はありません。基準(給与収入320万円以上など)が適用されるのは、4親等以内の親族でない人を選ぶ場合と、65歳以上の人を保証人にする場合だけです。
Q. 連帯保証人に年齢の上限はありますか?A. 父母・4親等以内の親族であれば上限はありません。65歳未満という条件があるのは保証人のほうです。ただし、貸与終了時に本人が45歳を超える場合は、連帯保証人・保証人ともその時点で60歳未満である必要があります。
Q. パート収入しかない母を連帯保証人にできますか?A. 収入額の基準はないため、父母であれば選任条件上は問題ありません。収入に関する証明書類(源泉徴収票や所得証明書)は提出が必要です。
Q. 保証人は必ず親族でないといけませんか?A. 原則は4親等以内の親族です。親族以外を選ぶ場合は「返還保証書」と収入・資産の証明書を添付し、資力の基準を満たす必要があります。
Q. 保証人が途中で条件を満たさなくなったらどうなりますか?A. 保証人の死亡・債務整理などで保証が続けられなくなった場合は、変更届で別の人に変更します。新たに選任できない場合は、やむを得ない事由として機関保証への変更が認められることがあります(保証料は貸与始期にさかのぼって一括払い)。
まとめ
- 人的保証で必要なのは連帯保証人(原則父母)と保証人(父母を除く4親等以内の親族)の2人
- 4親等以内の親族なら年収の基準はない。基準が適用されるのは親族以外を選ぶときと、65歳以上の人を保証人にするとき
- 年齢の上限(65歳未満)があるのは保証人だけ。連帯保証人には上限がない
- 保証人は本人・連帯保証人と別生計が条件。連帯保証人の配偶者も保証人にはなれない(「父と母」の組み合わせは不可)
- 未成年・学生・本人の配偶者・債務整理中の人は、書類を出しても選任できない
- 条件を満たす2人がそろわなければ機関保証で申し込める
保証人の可否は「続柄→生計→年齢→配偶者・学生・債務整理」の順に確認すれば、ほとんどのケースは自分で判定できます。迷う続柄や書類の扱いは、申込前に学校の奨学金窓口に確認しておくと安心です。
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